1.一部分割
 遺産分割というのは、常に相続財産全体の相続人への総合的な分配を目的として行われるものである。従って相続財産の範囲が不明であるような場合に、一部のみの遺産分割を為してもこれは無効である(大阪家審昭40.6.28家月17−12−125、高松高決昭8.11.7 家月26一計75、福岡家小倉支審昭56.6.18家裁月報34−12−63)。
 しかし、いかなる場合にも必ず遺産分割は遺産全部について一括して行わねばならないとまで解する必要はなく、残余の相続財産を残すこととなっても遺産分割の総合性を害することがない場合には一部分割も認められてよい。判例も一部分割を認めている例がある(東京家審昭47.11.15 家月25−9−107、同昭48.12.11家月26−7−40、大阪家審昭51.11.25家月29−6−27、鳥取家米子支審昭55.8.15 家月33−9−70、東京高判昭59.5.31判時1049−41)。
 要するに既に為された一部についての遺産分割協議が有効か否かは、遺産全体についての総合的な分配という分割協議の目的に合致するか否かという観点から考えれば良い。