まず調停
調停でもまとまらなかったら次に審判
どのように調停を申立てるの?
遺産分割調停
遺産分割について、協議が調わないときは、家庭裁判所に調停の申立をすることとなる。
1.調停行為能力
当事者間に協議が調わなければ遺産分割の調停申立をすることができる。その場合の調停行為能力につき、家事審判法、家事審判規則、家事審判法7条で準用される非訟事件手続法上明文規定がないが、訴訟能力に準じた調停行為能力が必要であると解することに異論はない。
したがって、調停申立前に共同相続人本人の意思能力の程度に応じて、例えば、禁治産宣告を得て、後見人を加えて(後見人を相手として)申し立てるといった措置が必要である。
なお、とりあえず能力に問題のある者を相手方として調停申立をし、調停の場でその事情を説明して、場合によっては家事調査官に面接調査等をしてもらうなどして、調停委員会に調停行為能力について判断してもらいその指示を受けるという方法も考えられる。
2.管轄、遠隔地に居住する相続人の調停出頭
(1)申立をする管轄裁判所は相手方の住所地又は当事者が合意で定める家庭裁判所である(家審規129)。
(2)なお、相手方が外国に居住し、日本に住所又は居所を有しないときは、管轄裁判所は東京都千代田区を管轄する裁判所(東京家庭裁判所)となる(家審法7、非訟法2V、人訴法による住所地等指定規則)。
(3)また、申立をした家庭裁判所に土地管轄がない場合であっても、裁判所が特に必要ありと認めた場合には自庁処理をすることができる(家審規4T但書)。これを求めたいときには、その旨の上申書を出すとよい。
(4)家事調停は本人自身の出頭が原則である(家審規5T本文)。ただしやむを得ない事情が存する場合には代理人を出頭させ、又は補佐人と共に出頭することができる(同項但書)。代理人または補佐人は弁護士でない者もなることができるが、その場合には家庭裁判所の許可が必要となる(同U)。相続人のうち外国等遠隔地に居住する者がいる場合には代理人を選任させるのが良いと思われる。外国居住者からの委任状についてはサイン証明の添付を求められることがある。
遺産分割審判
1.調停と審判
遺産分割調停が不調となると審判手続に移行する(家審法26)。いきなり審判申立をすることも可能であるが、乙類審判事件については、裁判所はいつでも職権で調停に付することができる(同法11)ため、実務上は審判申立をしても調停に回付されることが多いであろう。
なお、共同相続人の一人が行方不明の場合、民法第907条第2項に言う「協議をすることができないとき」に該当するとして遺産分割審判を行った例がある(鳥取家審昭35.3.31家月12−7−121)。ただし家裁実務では、行方不明者の為の不在者管埋人を選任したうえで、調停を申立するよう指導する例が多いようである。
4.家事審判手続
家事審判手続は職権探知主義に基づき、非公開手続にて行われる。また、この手続は身分関係の発生、変更、消滅などに関係し、代理に親しまないものであるから、本人の出頭が要求される(家審規5T)。ただし止むを得ない事情が存する場合には代理人のみの出頭が可能である。審判手続において証拠調べが行われる場合には民事訴訟法の規定が準用される(家審親7V)。
5.審判
審判は家事審判官が主文及び理由の要旨を記載した審判書を作成し、これに記名押印する。遺産分割審判に対しては即時抗告をすることができる(家審規111)。