3.遺産分割前の遺産の処分


自己の持分のみの譲渡ならば問題なし



 共同相続人の1人が単独の相続登記をし、第三者に所有権移転登記をした場合、他の共同相続人はその登記の抹消を請求し得るか。
(1)他の共同相続人は全部の登記抹消を請求し得ず、それぞれ自己の持分についてのみ登記の抹消請求し得るにすぎない。
(2)遺産である不動産を自己に単独登記したり、第三者へ移転登記を為すことは遺産の処分行為であり、相続人全員の同意がなければできず、従って右行為は本来無効の行為である。
  しかし、第三者へ無断で譲渡した共同相続人にも持分があり、登記もその持分については実態関係に符号していると考えられるので、他の共同相続人はそれぞれ自己の持分についてのみ登記の抹消を請求し得るにすぎない(最判昭38.2.22民集17−1−235、最判昭37.5.24 裁判集民60−767)。
(3)なお未だ第三者へ権利の移転がない場合に、他の共同相続人は、不法に単独登記をした共同相続人の1人に対しその登記の全部抹消を求められるとした下級審判例がある(名古屋高金沢支審昭43.5.22 判時535−65)。

相続分の指定がなされていた場合・・・・・・・最判平成5・7・19ないみたい