占有権

(1)相続性
  判例は一質して相続性を認めている(最判昭44・10.30 民集23−10−1881、最判昭46・11・30 民集25−8−1437)。学説も、占有権は、物理的観念ではなく、社会観念上その物を支配していると認められることであるから、相続によって承継されると解するのが通説である。




(2)自主占有への転換
  相続を機会に他主占有から自主占有に転換できるか(民185)につき、判例は一定の要件の存在を前提にこれを肯定する(最判昭46・11.30 民集8−1437)。相続人には被相続人の占有を承継するという一面とともに、自己の所持にもとづいて固有の占有を開始するという一面があり、後者に着目するときは民法185条の新権原によって自主占有を開始したといえるとしている。
(3)相続人は被相続人の占有の瑕疵を承継しなければならないのか、それとも瑕疵のない自己の占有のみを主張できるのか(民187)。
  判例は自己の占有のみの主張を認める(最判昭37.5.18 民集5−1037)。相続は包括承継ではあるが、相続人が自己の所持にもとづいて固有の占有を開始するという一面があるから、被相続人の占有を切り離して自己の占有のみを主張できる。