債務者が免責されると、借金が帳消しになります。
そこで、免責不許可事由がある場合、債権者は異義を申立てる事が出来るのです。
もっとも、滅多にない、というか全然ありません・・・・ずいぶん破産手続を見てきましたが、異議を申立てた債権者がいたケースは今のところ一件もありません。
なぜ、債権者はこんなにも異議を述べないのか・・・・
私の推測ですが・・・・
@そもそも、債務者の事情を詳しく知らない事。つまり、サラ金業者は貸したカネが生活費に使われたのか、パチンコに使われたのか分からない。
Aさらに、免責不許可事由が債権者に分かっていたとしても・・・・例・・カードで贅沢品を購入した記録があって・・・債権者が免責不許可事由を指摘したとしても、裁判所の裁量により免責の決定がなされる場合がかなりある(裁量免責)。したがって、免責に対する異議の申立てをしても無駄になる場合が多い事。
Bまた、仮に、異議を述べ、その結果、破産(免責)申立人が免責不許可の決定となったとしても、債権者は回収に苦労する事になる(カネを請求する権利があっても無い者からはいくら頑張っても取れない)。それよりは、貸金を損金として処理して新たな顧客を見つる事に力を注いだほうが経済的に合理的。
以上を勘案して、債権者はたとえ債務者の免責不許可事由を知っていても異議を述べないのだと思います。
しかし、万一、債権者が異議を述べてきたら・・・・その対策について考えなければなりません。
まず、裁判所は免責の審尋の日から1ヶ月以上の期間を定め、その間に債権者に異議申立をする期間を与えます(破産法366条の7)
その間に債権者は免責に対して異議を申立てるのです。たいていは下記のような書面でなされるそうです。
平成 年 第 号破産申立事件
○○地方裁判所御中
平成 年 月 日
債権者 ○和ファイナンス
代表取締役 ○○ ○○
免責申立に対する異議申立書
御庁にて破産申立受理済みの 平成 年フ第○○号事件に関し下記の通り異議を申立てます。
1、破産者は、当社から借入れる際、借入申込書に自筆で他社の借入残高を50万円と記入し、
また、収入が15万円しかないにもかかわらず、30万円と記入し、もって、詐術により50万円を
借入れた。
実際には他社に合計200万円の負債があった。
これは、破産法366条の9、2号に該当する事は明白である。
2、さらに、短期間が負債総額が増えており、浪費や賭博で借入金を増やしたと思慮される(破産法375条1号)。
3、以上から、免責不許可に該当する事が明らかであるので、免責不許可の決定をなすよう上申いたします。
上のような異議書が提出されると・・・裁判所は破産申立人の意見を聴く機会を与えます(破産法366条の8)。
そこで、次のような「免責異義申立に対する反論書」を裁判所に提出しましょう。
平成 年 第 号破産申立事件
○○地方裁判所御中
平成 年 月 日
免責申立人 ○○ ○○
免責異議申立に対する反論書
○和ファイナンスは、虚偽の借入残高を借入申込書に記載したと主張するが、
失当です。
確かに負債総額は200万円でありましたが、それはカードによる物品購入のローンと
金融業者からの借入金の合計金額です。
金融業者に対する借入は50万円でありました。
借入残高をサラ金業者のみに対する借入金と解釈し、50万円と記載したのであり、
したがって、虚偽の事実を述べた認識はありませんでした。
つまり、詐術の故意はなく、破産法366条の9、2号に該当しません。
また、15万円の月収しかないところ、30万円と記載した点については、事実です。
しかし、「支払いをしないと大変な事になる」との強迫観念に取り付かれ、冷静な判断を
失っていた事が原因です。
また、当時、転職を考えており、転職が成功すれば30万円の月収が入るはずだったのであり、
全くのデタラメではありません(内定をしてくれていました)。
さらに、当時は親と同居していたので生活費もあまりかかりませんでしたので、月収15万円
でも借金を返済する事が可能と思っていました。
また、浪費や賭博で借入金を増やしたと思慮されると述べていますが、これは全くの濡れ衣です。
破産申立書・陳述書に記載したとおり、借金総額が増加してしまった原因は私の婚約者が病気になり
その援助を行った為であり、浪費や賭博は全くしていません。
債権者には多大な損害を与えてしまいましたが、反省し今後は身の丈にあった生活をしていく
決意を固めていますので、人生再出発の機会を与えてください。