司法試験機械的合格法(LECバージョン)

・はじめに

 私は司法試験の合格法についての原稿は、様々なところで様々な形で書いてきましたので、一つおもしろい趣向はないかと。そこで、LECの講座を利用することで、機械的合格法を効率よく実践する方法というテーマでお話を進めたいと思います。

 知る人ぞ知る事実ですが、私が司法試験の勉強を本格的に始めた時に受講したのは、LECの入門講座でした。その後LECの機関講座である論文基礎力完成講座、択一基礎力完成講座の両方を受講しました。私の受験勉強の期間は、大学2年生の4月に始まり、卒業した都市の10月末で終わりました。すなわち、ちょうど3年半勉強をしたのですが、そのうちの最初の2年間はLECで勉強をしたことになります。このように私は現実にLECの講座を利用して合格したのですが、その過程をそのまま書くのでしたら、単なる合格体験記になってしまいますし、最も効率のよい合格の仕方でもなくなってしまいます。

 そこで、私が今までの経験を踏まえて受験生になったならばどのように振る舞うかということを、合格体験記風に書いていきたいと思います。

・勉強の開始

 私は司法試験の受験をすることを決めた時@まず考えたのは、どうせ受験をするのなら、確実に受かってやろうということです。

私は、司法試験は難しい試験だから、よほど効率よい勉強をして初めて受かる試験だと考えていました。効率を追求する手段として私がよく考えるのは、自分でしかできないことしかしないということです。他人でもできることは、他人に対価を払ってやってもらう、必要な情報も専門家にお金を払って得た方が効率がよいと思われます。

 A私は週に3〜4回中学生や高校生を教えることでそれなりの収入を得ており、学生にしてはそれなりのお金も持っていました。

@本来の私は、単に友人が行くからという消極的な理由で予備校に通い始めました。

Aこれは、史実通りです。私は教えるのが好きでした。

 

 そのように考えていたところ、どうも司法試験の予備校というものがあるらしいと聞きました。少し調べてみると、この予備も複数の選択肢があることが分かったので、@早速予備校選びに入りました。

 まず、試験に受かるためには法学を学ばなければなりません。そのための講座として、入門講座が用意されています。ここで私は入門講座選びのポイントとして考えたのは、A自分の通っている大学から近いかということではないし、値段が安いかでもありません。まず6科目すべて教えてくれる講座か否かということが重要でした。

 私は、知識はすぐに身に付くものではなく、時間がかかるということを大学受験の体験で知っていました。知識が身に付くというのは、その言葉を使って説明してある文章の意味が分かり、自分もその言葉を使って文章を組み立てられることだと思います。そのようにならなければ司法試験に受かりません。そこで、一秒でも早く全体を見渡したいと考えたのです。

 そうでなくても、同じ値段かつ1年ですべての科目が学ぶことができる方が、B情報単価も安いと感じたのです。

 このようにして選んだのがLECの入門講座でした。というのも、6科目すべて入門講座で教えてくれる予備校はここしかなかったからです。3科目しか教えてくれない入門講座に行く友人も多かったのですが、私は、C「これであいつもは消えたな……」と考え、にやっとしました。

@実際の私はLECしか知らなかったし、友人がそのままLECが一番入門講座がいいという評判だ、と教えてくれたので何も考えないでLECに入ってしまいました。

A実際の私は、自分の通っている大学から一番近いことしか考えていませんでした。元来が怠け者だったので、遠い予備校だと行かなくなるおそれがあったからです。

B例えば、「月刊○スキー」というパソコン情報誌は辞書のように厚いのですが、広告が紙面の半分以上を占めています。対して、「パ○コン批評」という雑誌は、薄くて高いのですが、広告が一つも入っていないので、満足感は高いのです。予備校の講義も半分は、先生の自慢話で終わってしまうものも多いのでご注意を。

C本物の私は、いつ友人に消されるかと思ってびくびくしていました。

・入門講座にて

 初めての授業では、どんな講義が行われるか相当興味がありました。

 もっとも、私は、高校生の頃ちょっとした大学受験@予備校オタクで、いろいろな予備校の教師の授業を@モグリで聞いていましたので、それなりに講師の質というものに目が肥えていました。だから、正直なところLECの入門講座にはそれほどの期待はしていませんでした。司法試験は合格者が少ないから、Aよい講師が現れる可能性が低いと考えたからです。しかし、BLECの講義は非常に聞き取りやすく、私はその講師、同じように説明できれば、大学受験の予備校でも人気講師になれるのではないかという印象を受けました。

 但し、法学はやはり手強く、授業内容は分からないこともたくさんありました。しかし、私は気にしませんでした。司法試験は難しいから、そんな簡単に出題される知識について、すぐに分かる方がおかしいと考えていたからです。

 

@予備校オタクだったのは本当です。モグリ(=無料受講のこと)については秘密。皆さんは見つかると受講料の3倍の罰金をとられますので絶対にモグリはやめましょう。

A現実には、これは確かにその通りで、私がLEC以外の予備校に行ったときにはひどい目に遭ったことも多かったように記憶しています。

Bこれも当時そのように思った記憶があります。

 

 授業の@予習復習ですが、私は授業の予習はしませんでした。その理由は、予習用に適当な教材がなかったからです。むしろ私は、講義がすべての勉強の予習であるとみなしていました。一番わかりやすい教材が予習用教材として適していると考えます。

 Aその代わり、私は入門講座は絶対に休みませんでした。休んでも先がつらくなるだけです。今耐えられない人が、先も耐えられるわけはないのです。何よりも、私は勉強をするきっかけを失うのをおそれました。

 一方で、復習はしっかりしました。私は、講義は勉強のきっかけに過ぎず、知識を最終的に身につける勉強が本当の勉強であると考えていました。だから、私は復習を重視しました。具体的には、まず、入門講座で出てきた進出の用語の意味をできるだけ覚えるようにしました。但し、一回で覚えられないのは当たり前だと考えていましたので、血眼になって覚えようとしたり、覚えられないから自分に絶望したりしませんでした。

 さらに、B論点では、テキストの記述に書いてあることの意味を分かろうとしました。もちろん分からないこともあります。その場合は、その部分はとりあえず思えようとすることにしました。私は、論点とは、問題を解くための公式であると考えていたので、その内容を必ずしも理解する必要があるとは思っていません。但し、理解をした方が内容を覚えやすいので、理解しようとしたに過ぎません。特に、論点の修得の際に注意をしたのは、その論点はなぜ問題となるのか、とその解決法の二つです。なぜ問題となるのかが分からなければ勉強をしていてもつまらないし、解決法を知らなければ問題を解けないのです。

 さらに、できるだけ短答式試験の問題を解くことにしました。短答式試験に受からないと論文を書かせてもらえません。また、短答式試験なら、選択肢があるのでとりつきやすいと考えたのです。

 ただ、最初はまじめに問題を解いていたものの、全く正解しないので、途中で解くのをやめて問題と答えを照らし合わせながら読むことにしました。どうせ間違えて答えを読むだけになるなら、考えてもムダだと考えたからです。答えをいきなり読んでしまうことには、抵抗がある人がいると思います。また、過去問は本試験受験前の力試しにとっておきたいという人もいると思います。

 しかし、実際、最終的に過去問は五回から一〇回は解くことになりますから、一回目にいきなり問題と答えを読んでも、何の問題もありません。また、本試験前まで過去問をとっておくことはやめるべきです。過去問を解かないと分からない自分の弱点を本試験前に発見した場合、その弱点を克服する時間がないからです。過去問は、本試験で自分がうまく振る舞えるように失敗をたくさんしておく場であり、その欠点を克服する材料でおあるのです。

 

 @現実の私は、予習・復習は全くしませんでした。本気で合格する気がなかったからです……。

 A入門講座は絶対に休んではなりません。受験生の人は簡単に休みすぎる気がします。入門講座を難しいなどと言っていては、択一の問題など解けるわけがないのです。

 B論点とは、法律の条文の読み方について疑問がある点のことです。法解釈学とは、法の意味が不明確な部分の意味を明らかにする学問です。司法試験では、法の解釈についての知識を要求する問題がたくさん出題されます。

 

 このようにして、最初の一年間は過ぎました。入門講座は、一年で終了するので、次を考えなければなりません。そこで、私は問題を解くことにしました。しかし、ただ問題を解くだけだと何の目標もありません。何の目標もなく勉強をすると、自分に甘えてしまうので、勉強をする量が少なくなるおそれがあります。そこで、私は@答練、特に論文の答練を受けることにしました。

 C私は問題を解いたことはなく、初めてでしたので、本当に自分が問題を解けるのか不安がありました。しかし、無理矢理答練を申し込めば、その後は必死で予習をすれば何とかなるだろうと考えました。また、このようにして必死に予習をするからこそ入門講座で教わった知識を十分に身につけることができると考えました。

 最初答案が書けないのは当たり前であるし、何よりも無理矢理問題を解こうとしなければ、いつまでも問題が解けるようにはならないと思います。

 

@答練とは、大学受験予備校におけるテストゼミに似ています。問題を時間内に解いて、その問題の解説講義を受けます。自分の解いた問題の解答は、添削をしてもらえます。

Aここで書いたような思考方法は、現実に私も採ったものです。しかし、このような決意ができたのは、入門講座終了後ではなく、択一試験敵前逃亡後でした。敵前逃亡とは、受験回避のことです。

 

 答練を受けることにしたので、答練の選択のために研究を始めました。私が答練に求めるものは、まず自分自身が勉強をするためのペースメーカーにするために、相当の回数があることでした。具体的には週二回です。週一回だと、追いつめられないと勉強をしないおそれがある自分としては、勉強量が不十分になるおそれがあります。かといって、それ以上だと一回の答練に対して十分の予習ができず、答練をきっかけに入門講座の知識の習得を図るという目的が達成できないおそれもあります。以上の考慮の結果、@相当な回数とは週二回だと考えました。

 ただ、六月期からはじまる答練では週二回のペースで開催されるものがたくさんあったので、この点は、基本的にはどの予備校の答練でも問題はありません。

 さらに、単に知っていることを吐き出すだけで書ける問題ではなく、自分の知っている知識を応用しなければ解けない問題が出題される答練がいい答練だと思いました。司法試験は難しい試験だと聞いていたので、たぶんA自分の知らない事項が出題されるだろう。そのようなときに、いかに自分の知っている知識だけでそれなりの答案を書き上げるかの力を鍛えたかったからです。まだ知識も身に付いていないうちにえらそうなことを考えたものだと思います。しかし、私は本試験に合格するには、自分にできるだけ難しいものに挑戦し、最終的には演習の時点では、本試験合格に必要と思われる以上の力が要求される問題が解けて初めて確実に本試験に合格すると考えていました。だから、無理は承知です。もともと無理をしなければ合格はできないと思います。

 

@但し、ここにいう相当な回数は、入門講座終了の時点から一年内における相当な回数です。

 例えば、択一合格経験がある方ならば、予習のそれほど時間をかける必要はありません。それよりも、たくさん文章を書いて、自分の頭の中にあることを的確かつ素早く文章に変換する能力を鍛えるために、週四回答練を受けるという方法もありだと思います。

A自分の知らない事項が出題される……この予想はあたっており、本試験ではどんなに勉強していても、知識の暗記だけでは解けない問題が現実に出題されます。だから、司法試験に合格したいのならば、知識を身につけることはそこそこにして、知らないことが出たときにうまく振る舞える力を鍛えるべきだと私は思います。

 

 このようにして、六月期から、答練を受講しました。九月には、すべての科目についての答練を一応終えました。この時点でも自分の知識が十分身に付いたとはとても思えません。しかし、焦る必要はないと思いました。どうせ、一〇月から商法の答練がまた始まります。そこから、三月までまた六科目すべてについて勉強をすることになります。さらに、択一試験に合格していれば、その後一ヶ月間、予想答練という答練が毎日実施され、そこで六科目すべてについて総復習する機会があります。来年までに何度も勉強する機会はあると考えました。

 一〇月からまた論文答練を引き続き受講しました。但し、答練受講の他に択一試験の勉強も再開することにしました。短答式試験は平成七年度以降、難化傾向にあるとされていたので、これは十分の容易をしなければ合格できないと考えたからです。また、一月から短答式試験の答練が始まるので、それまでにある程度の短答式問題を解くための力を身につけようと考えたのです。

 かくして、年内は、論文答練受講の他に、択一問題の過去問をすべて解けるようにすることに心を砕くようにしました。

 年明けは、論文答練の裏で択一模試を受けました。最初の数回、特に第一回目はひどい点数でした。しかし、回数を重ねるうちに、自分の弱点が洗い出され、点数はだんだん向上し、@四七点〜五〇点が取れるようになりました。

 

 @現実には、私は四七点がやっとでした。ただ、最近の本試験の問題は難しく、それに併せて答練も難しいので、四七点とれば十分本試験でも合格できると思います。

 なかなか問題が解けないので、現実の私は、神経性胃炎になって、二回も胃カメラを飲みました。

 

 かくして、五月の短答式試験の受験に望み、受験後は、また商法・訴訟法を勉強しました。内容は、入門講座の復習です。択一合格後は予想答練を受け、かつ論文試験受験前の3週間は、これまで受験した答練の問題と答えをすべてもう一度読み返しました。

 論文受験後は、念のため、来年の受験を考えて早速答練を受けました。が、九月末に論文試験に合格していたので、@答練受験は不要になりました。口述試験は過去問を読書してのぞみました。試験委員の先生は目上の先生であることだけを心がけて質問に答えたら……最終合格しました。

 

 @実際私はこのように答練を受けました。ただ、何の予習もせずに答練を受講しましたので、口述試験受験後、答案を取りに行ったら、不合格答案とされた答案がたくさんあって苦笑しました。