資本充実原則は新会社法では放棄されました。資本充実原則は先に資本金額が決まって,それを充実させるべきとの原則です……が,会社法では現に払い込まれた金額を基に資本金額が決まります。そのため,資本が充実しないことはありえないことになりますよね(弥永先生や宮島先生の昨年に出た新会社法対応の本では資本充実原則についての説明がありますが,これも訂正すべきことになります。弥永先生は3月に出た10版で訂正されています。宮島先生の本については僕はまだ確認していません)。

 だから設立の説明のところでは,「資本充実」という言葉を使わないように気をつけていたのですが,会社法総論のところに資本充実原則についての説明が一部残ってしまっています。

 そこで,資本充実原則の論証の後には,「しかし,現在は発想の転換が行われ,現に払い込まれた金額を元に資本金額が決まるものとされた。すなわち,資本充実原則は放棄されたことになる」という説明を加えていただければ幸いです。

 また,払込取扱機関への全額払込の強制なども会社財産確保の制度とはいえますが,資本充実原則の表れではないことになります。