猫はいいなぁと、ふと思うときがある。

自分勝手で、気分屋で、人間に愛想を振り撒く姿はあまり見られない。

本当に自由奔放に生きている、様に見えているだけなのかもしれない・・・。

自分が人間に生まれた事により、人間からの視点でしか見えるだけなのかもしれない。

 

一人の青年が机に向かっている。

「あぁ・・・、めんどくさい・・・。」

そんな独り言をつぶやいている。

「なんで、こんな勉強なんかしなくちゃならないんだ。」

そう言うと、気晴らしか二階のベランダに行き外を眺める。

この青年は受験勉強真っ最中なのだ。

人間に生まれたからには一度は通る道。

だが彼には苦痛以外の何者でもなかった。

あたりを見渡して、ふと目についた。

それは屋根の上にいる猫があくびをしている光景。

「猫はいいよな〜。毎日寝てるだけなんだから。」

その猫を見て青年はつぶやいた。

「俺も猫に生まれたかった。」

そんな独り言を言った時にどこからか声が聞こえた。

(なら猫になってみるか?)

「・・・なんだ!?」

突然の声に驚く青年。

青年はあたりを見渡すが誰もいない。

そんな時、さっきの屋根の上で寝ている猫と目が合った。

その瞬間、

『キンッ!!』

と言う金属の交わる様な奇妙な音がして、青年は意識をうしなった。

  

   ・・

「・・・・・・・・・・・?」

小一時間たっただろうか。

ようやく青年の意識ははっきりしてきた。

しかし見慣れない風景が目の前にあった。

「いったいどこなんだ?」

そう言いたかった青年は、声が出ない事に気づいた。

そして青年は、自分の姿を見て驚いた。

全身毛むくじゃらで、手には肉球がついている。

声を出せば『ニャァ』としか鳴けない。

まぎれもなく猫であった。

そう、青年は猫になってしまったのである。

青年は、いや正確には青年だった猫があたりを見渡す。

先ほど自分がいた所に、青年である自分の姿がある。

「ニャ!?」

声の出せない猫は、何か言いたそうな目で青年の方を見ている。

青年の姿をした者はこう言った。

「明日まで私の体を貸してやろう。好きなように遊んできなさい。」

そう、この青年は先ほど屋根の上で寝ていた猫だったのだ。

入れ替わってしまった猫と青年。

そして青年の、「1日猫体験日」がはじまった。

 

 

 

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