第]期第三回講座 『杉の柩』を読む (2017.3.25) |
書誌的情報
- 原書"The Sad Cypress"は1934年の出版。原題はシェイクスピアの喜劇の最高峰『十二夜』の中の道化の台詞(歌詞)から採られている(第二幕第四場)。最新の訳本であるクリスティー文庫と昔の原書(PB)の一部では、その引用文はカットされている。なお十二夜とはクリスマスから12日目の1月6日のこと。この日はエピファニー(公現祭)で、キリストが神の子として公に現われたことを祝う日だそうだ。
- 翻訳書は以下の通り(児童物は除く)。
- 『杉の柩』(恩地三保子訳、早川ポケット・ミステリ、1957)
- 『杉の柩』(恩地三保子、ハヤカワ・ミステリ文庫、1976)
- 『杉の柩』(恩地三保子、クリスティー文庫、2004)
- 映像作品は以下の通り。
- 「杉の柩」(放送(英ITV)、2003、(NHK)2005/8/24、監督:デビッド・ムーア、脚本:デビッド・ピリ、出演: デビッド・スーシェ(ポワロ))
- 「杉の柩 「アガサ・クリスティーのフレンチ・ミステリー」」(放送(France2):2010、監督:エリック・ウォレット、脚本:Thierry Debroux、出演:アントワーヌ・デュレリ(ラロジエール警視))
作品内容
探偵:お馴染みのエルキュール・ポアロ。ポアロ物の18冊目(全体では27冊目)。
主な登場人物:ハンターベリイに住む金持ちの未亡人ローラ・ウエルマン、ローラの姪エリノア・カーライル、ローラの義理の甥ロディー・ウエルマン、門番の娘メアリイ・ジェラード、ウエルマン家でローラを看護する看護師オブライエンとホプキンズなど。
物語:ロディーはエリノアと婚約したものの、そこに現われたのが美貌のメアリイ。彼女の出現でロディーが心変わりしたのか、二人の婚約は解消された。そしてメアリイの突然の死。エリノアが作った食事の中に毒薬が仕込まれていたと思われた。エリノアは逮捕されたが、三角関係のもつれが原因なのか?
本書を読んだ後(読みながら?)、可能ならば考えてきてほしいこと
@ この作品の評価を星の数(★1〜5)で示してください。
A 特に謎解き小説としての評価はどうでしょうか?
B この作品のトリック・プロットには欠点があります。気づいた点を指摘してください。
C こうした欠点があっても、作品として高く評価できるでしょうか? その理由は?
D 謎解きよりも恋愛を前面に出した作品ですが、クリスティはこうした傾向の作品をいつ頃から書くようになったでしょうか?
E 同年に書かれた長編作品『愛国殺人』との作風の違いに注目しましょう。
F 作品中に、クリスティ自身の経験が投影されている部分があるでしょうか?
G 他のポアロ物との違いが感じられた点がありましたか?
H クリスティは、ポアロを登場させたのは失敗だったと言っていますが、あなたの意見は?
I エリノアとロディー、メアリイの三人の人物像にどういう感想を持ちましたか?
次回の資料はhttp://www.ab.cyberhome.ne.jp/~lilac/christie/seibushiryou.htmで参照できます。
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