第5回 『カーテン』を読む (2014.2.22)

書誌的情報

  • 英国での原書は1975年の出版。原題は”Curtain Poirot’s Last Case”。
  • 日本での最初の翻訳本は『カーテン』(中村能三訳、早川書房、ハードカバー、1975/12)。最新の訳書は『カーテン』(田口俊樹訳、クリスティー文庫、2011/11)。
  • 生前のクリスティが刊行した最後の作品で、文字通りの「ポアロ最後の事件簿」であった。
  • 執筆時期は1940年代初期(第二次世界大戦中)のようである。自分に万が一のことがあった時のことを考え、娘ロザリンドにその著作権を譲るために書いたもの。原稿の存在は、ジャーナリストのフランシス・ウィンダムによるクリスティへのインタビュー記事で1960年代に明らかになっていたが、詳しい内容は出版直前まで秘密にされていた。
  • ファンクラブ員のベストテン投票(1982年)では6位(平均点8.27、標準偏差1.94)と堂々のベストテン入りを果たしたが、これには同情票も多かったようだ。
  • 生前に出版された理由は、コリンズ社社長のサー・ウィリアム・コリンズの殺し文句(「貴方自身がポアロを殺さなかったら、他の作家によって生き延びさせられますよ」)によってだが、クリスティは以前からポアロを持て余していたことも事実であった。
  • 本書は世界中でベストセラーになったが、そのきっかけは1975年8月6日のニューヨーク・タイムズ紙が第一面でポアロの死を実在の人物の死のように報じたことであった。日本でも主要新聞で報道された。いち早く「週刊新潮」誌上では常盤新平訳の「カーテン」が連載された。
  • TV映画(スーシェ主演)は、英国では2013年11月に放映されている。

本書を読んだ後(読みながら?)、可能ならば考えてきてほしいこと

  1. この作品を読んだ感想を述べてください。
  2. 執筆は第二次世界大戦中と言われていますが、その前後には他にどのような作品を書いていたでしょうか? 他の作品との違いがあるでしょうか?
  3. ヘイスティングズが登場する長編は何作あるでしょうか?
  4. 本作のヘイスティングズ像をどう思いますか? また、本作にヘイスティングズを登場させた意味を考えてみましょう。
  5. 本作の構成(プロット?)の特徴を挙げてください。
  6. ポアロが最後に対決するものとして本作の犯人像をどう思いますか?
  7. トリック等で面白いと思った点を挙げてください。他の作品にも使われたトリックがあるでしょうか?
  8. 他の作家の主人公でその「死」が描かれたものがあるでしょうか?

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