第15期第三回講座 『復讐の女神』を読む (2019.9.28) |
書誌的情報
- 原書"Nemesis"は1933年の出版。英国の出版社は"William Collins
& Sons"で、米国の出版社は"Dodd,Mead"。
- 翻訳書は以下の通り(児童物は除く)。
- 『復讐の女神』 (乾信一郎、早川ポケット・ミステリ、1972)
- 『復讐の女神』 (乾信一郎、早川ミステリ文庫、1980)
- 『復讐の女神』 (乾信一郎、早川クリスティー文庫、2004)
- 映像作品は以下の通り(主としてhttp://www.deliciousdeath.com/indexj.htmlより)。
- 「復讐の女神」("Nemesis")(英BBCで1987/2に放映。日本ではNHKが放映)
監督:デービッド・タッカー、脚本:T.R.ボウエン、
出演:ジョーン・ヒクソン(マープル)、
フランク・ガットリフ(ジェイソン・ラフィエル)、
ピーター・ティルバリー(ライオネル・ピール)、
ブルース・ペイン(マイケル・ラフィエル)、ジェーン・プーカー(ミス・クック)、
ヘレン・チェリー(エリザベス・テンプル)
- 「復讐の女神」"Nemesis"(英ITVでMARPLE Series 3として2009/1に放映。日本ではNHKが放映)
監督:ニコラス・ウィンディング・レフン、脚本:スティーブン・チャーチェット
出演:ジェラルディン・マクイーワン(ミス・マープル)、
ローラ・ミッシェル・ケリー(マーガレット/ベリティ)、
ダン・スティーブンズ(マイケル)、 グレイム・ガーデン(ブロードリブ)、
リチャード・E・グラント(レイモンド)、 ルース・ウィルソン(ジョージーナ)
- "Associes contre le crime"(仏のTVで2012年に放映。)
監督:パスカル・トマ、脚本:Clemence de Bieville, Nathalie Lafaurie
出演:カトリーヌ・フロ、アンドレ・デュソリエ、Linh Dan Pham
本書を読んだ後(読みながら?)、可能ならば考えてきてほしいこと
- この作品の評価を★の数で答えてください。(★1〜5)
- クリスティは、晩年は回想の殺人を扱った作品を多く書いています。なぜだと思いますか?
- この作品の魅力はどこにあるでしょうか? また評価できない点は?
- この作品でのミス・マープルの人物像に、何か際立った点があるでしょうか?
- 物語の展開、全体のプロットや語り口、ミス・マープルの推理の仕方などについて、どんな感想を持ちましたか?
- ミス・マープルが捜査を引き受ける理由について、どう思いますか?
- 被害者ヴェリティ・ハントの人物像について、どう思いますか?
- ヒクソン版のドラマを見た方は、その違いについての感想を述べてください。
本書は三部作の第二作か? 霜月蒼氏の疑問に答える(余談)
霜月氏は『アガサ・クリスティー完全攻略』(講談社、2014)の巻末ノートで、ネットで検索するかぎり「三部作構想」に言及しているのは日本だけ、と述べている。私も何回か三部作と書いた記憶があるので、早速調べてみた。
- 本書を「ミス・マープル三部作」の第二作としたのは、早川ポケミス『復讐の女神』(1972年12月15日発行)の巻末解説を書いた(S)氏(おそらく早川書房の編集者だった菅野圀彦氏)。
- このことを日本で最初に紹介したのは太田博(各務三郎)氏で、1971年10月号の「ミステリマガジン」のコラム「野帳メモ」に書いている(三部作とは書いてないが)。その際太田氏は1971年の業界誌Booksellerに載った原文を参照した(菅野氏も同じと思われる)。
- 各務氏も菅野氏も早川書房の編集者で(二人とも雑誌「早川ミステリマガジン」の編集長を務めた)英語に堪能な方。二人が揃って誤読するとは考えにくい。つまり原文の方が間違っている可能性が高い。
- この記事は英国で"Nemesis"が発売直前に書かれたので、三部作として構想されていても、まだ噂の段階に過ぎないと想像できる。それを筆者が「飛ばし記事」(?)として書いたので、「Woman's Realm」という掲載雑誌名を本の題名と勘違いしてしまったというのが真相ではないか?
- 1971年当時の"Bookseller"で確認すればはっきりするが、調べた限りでは国会図書館にも残っていなかった。
これまでの資料は
http://www.ab.cyberhome.ne.jp/~lilac/christie/seibushiryou.htmで参照できます。
質問やメルマガへの参加はwhtushin@gmail.comまでご連絡ください。
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