★ ホーム、スイートホーム ★
■小さい頃から、家の窓から光ってる灯かりによわい。日が暮れると、マンションの窓がスイートホームの物語を静かに語りつづける。この時、道途中の私はまちがいなくホームシックに落ち込んで、一刻でもはやくうちに帰ろうと足をとばす。
来日後、ごく普通に働いて、ごく普通に賃貸マンションに暮らす。が、壁に釘一つでも戦々恐々の生活にはやがて窮屈が感じる。やはりマイホームだなぁっと。
時を刻んで10年、永住も目の前。メールボックスから分譲物件のチラシを見るたびに、ココロ深く、夢が芽生えていく。おだやかな春風に乗って、ついにモデムルームへ足を運んだ。そして、エンジンがかかったらもう止められない。三ヶ月後、「不動産売買契約書」に自分の印鑑が押された。
■今回重点的に狙ったのは地元のGAと都内下丸子開発地域のBTであって、どっちも上質な大規模マンションで手放すに忍びないほどだった。
人気集中の物件に当然ながら高い倍率がつく。締切りの際、BTの倍率は3、GAは4だった。とことが、運命の女神はよく私に微笑んでくれた。両方とも的中!喜びと同時にどちらにしたらいいのか、悩んだ。
ちょうどその時、家族は海の向こうに帰省の最中。さっそく国際電話でうれしい知らせと共に相談をした。すると、娘は「転校しなくて済むからGAにして!」とサッサト決めた。妻は本音では都内への憧れだが心境が複雑だった。わたしとしてはもちろん会社への通勤を優先に考えたいが、十年住み続ける地元に対する執念に折れた。
結局、GAに決めたのは家族に対する執拗な愛情と言えるだろう。
■契約から入居までの半年、長いか短いか。マンションは見る見る延びていって、ついに上棟。冬場になると、地味なメッシュシートが脱かれ立派な姿が現れた。なるほど!さすが「グランアルト」!あまりに美しい胴体と雄大な気迫に魅力され、近くから遠くまで建物を味わいながら「英断だ!」と感嘆した。
お正月。一年の疲れを後にし、匠たちは工事現場を去った。夜、妻と一緒散歩に出かけ正面エントランスの方向に歩いてきた。静かの夜中に遠くから温かい灯かりが光っていた。近づくと、なんと巨大なエントランスホールの天井からライトがルビーとプラチナのように耀いて、一面のガラス壁を透け通し、外の暗闇に溶け込んでゆく。
妻の顔に会心の笑みが浮かべられ、新しい家に対する愛着は一段高まった。
■待ちに待った入居の日。連日の重労働にさすが体力の限界を感じたが、精神はずっと興奮状態。ダンボールの山からもの探しの苦労もあったが、電気のスイッチを覚える大変さに幸せが感じる。夜目覚めると、思わず「ここはどこ?」という気分。
ある日、お友達が遊びに来た。玄関に入ると、「わー、新居の匂い!」と大きな声を上げた。なるほど!「新居」!人々が憧れていたこのことばは、もう我が家族のものになっていた。
仕事を終わらせ、まっすぐうちに帰ってきた。日暮れの中、グランアルトはこんなに美しい!一階一階見上げると、点点のライトが温かく光っている。ここは我が家だ!ここは小さなユートピア!
ホーム、スイートホーム。