帽子を見つけた

 うちの近くに「イトーヨーカドー」というスーパーがあります。家族はよくこの店を利用します。日本のお店のサービスについて評判はとてもいいですが、ここでは別意味のサービスを味わいました。
 昨年の夏、わたしたちは3さいの娘を連れてヨーカドーに買い物に行きました。日よけのため、娘に布の帽子をかぶらせました。帽子はごく普通の、白地に果物の柄がついているもので、娘はこの帽子を気に入るようです。いつものように見物をしたり、買い物を済ませてお店を出たところ、娘の帽子がないことに気づきました。あわててスーパーに戻って、探しても見つからなく、レジの店員さんに聞いても手がかりがありませんでした。仕方なくうちに帰ろうとわたしは思いましたが、主人はあきらめず、入口の店員さんに訪ねました。店員さんは帽子のことを知らないがうちの電話番号をメモし、見つけたら連絡すると主人に言いました。でも、わたしはまったく期待しませんでした。
 翌日、うちの電話が鳴りました。「こちらはイトーヨーカドーです。果物柄の帽子を拾いましたが、・・・」わたしは受話器を握ながら一瞬反応がなく、その後嬉しさいっぱいでした。娘は喜んで、「帽子を見つけた!帽子を見つけた!」とうちに走り回りながら、叫びました。私は子供を連れてヨーカドーに出かけました。職員専用の出入口にて手続きをし、あの果物柄の白い帽子を受け取りました。
 それから一年。娘はヨーカドーのめばえ教室に通い始めました。毎週土曜日、必ず一度ヨーカドーをお訪ねします。ある日、教室が終わって子供服売り場で娘に上履きを買いました。そして、2階のレストランに食事をしてからうちに帰りました。すると、上履きが見つからないことに気づきました。前回の経験があるため、すぐお店に電話し、事情を説明し自宅の電話番号を教えました。次の日、はたしてお店からの連絡電話が入り、上履きが見つかったとの連絡でした。今回は主人が娘を連れて受け取りに行きましたが。帰ってきた際、わたしは主人に「日本のサービスはほんとうにいいですね!でもなるべくものをなくならないほうがもっといいでしょう」と言われました。"

(1998.9.16)