「知っているか? ジェイド」
 睦言にしては、色気もなく悪戯じみた声音に、うっすらと開かれた赤目が視線で続きを促す。
「力ある譜術士とやるとイイらしい」
 腰にくる低い囁き声は、鋭敏になった感覚に触れるのだが、今は楽しむだけの余裕がある。
「それで、その感想は?」
「火にないところに煙はたたん」
 惚気ているのか、誘っているのか微妙なところだ。
「私が教えるのでもない限り、そんな誘い文句あなたに教えたのは誰ですか?」
「マクガヴァンのじーさま」
 予想外の名前に僅かに目を見張る。
「………………まさか、誘われたわけじゃありませんよね」
「いや、なんかこの間の見合いの相手が譜術士だとかで、こっそりと教えてくれた」
 素直に白状するところは可愛いのだが、彼がしたかったのはジェイドの反応をただ見てみたかったという単なる子どもじみた悪戯心だったようだ。だが、ジェイドはあいにくと既にその下世話な噂話の全文を何度も聞いていた。
「…………そうですか、では、その続きは聞いていないのでしょうね」
「続き?」
 教えたのが基本的に品行方正の元帥であるのならば、続きを教えるはずがない。
 ピオニーの耳元に唇を寄せ、内容も声音も十二分に甘くして囁く。
「力ある譜術士とやるとイイらしい。――特に第七譜術士は格別だ。嘘だと思うのなら試してみればわかる――第七譜術士のあなたに元帥が教えるハズがないですよね」
 首に腕を回して耳朶に口付ける。
「あなたからの誘いととりますよ」



一応ジェピです。陛下第七譜術士設定。
拍手使用でした。……こんなものを拍手に設定していたとい(苦笑)


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