愛しきあなたへ

 なんだこれは?

 溶けかかった白いクリームとべちゃべちゃになってしまったスポンジ。その上で毒々しいまでに赤を主張しているイチゴ――それは、ショートケーキの慣れの果てだと思われた。
 そこまではいいのだ、問題はどうして、そんなものが寝室のベッドサイドにあるとかといことだ。本来冷たい場所に置くべきものを、暖かい場所に置いておいたため、見ての通り、溶けて酷い惨状になっていた。
 この理由を知っているのはおそらく今はベッドに眠る人物だけだろう。
 眠れないから一緒に寝て欲しいと駄々をこねられて、いつの間にか一緒に寝るのが習慣となってしまったが、今では自分の帰宅を待つ間に夢の中の世界へと落ちてしまうことが多い。 一人で眠れるのならば別に寝ようといえば、やはり眠れないと赤く腫れた目で自分の帰りを待っているのだ。全くもって困ったものだが、彼はそんなことは気にした様子もなく、今日もベッドを我が物顔で占拠していた。
 それでも、邪険にできないのは、見事なまでのまでの金の髪をシーツに散らして、すっかりと熟睡している彼の寝顔が驚くべきほど幼いせいか。
 警戒心なく無邪気に懐かれれば、怒るに怒れないものだ。
 それでも――この溶けたショートケーキをどうしたものか。
 悩んだものの、今日はもう答えを得られないと知っているからこそ、明日の朝、問いただすことを決めベッドにもぐりこんだ。

 次の日に、せっかくの誕生日プレゼントを食べてくれないと、泣き喚く彼を宥めるため、朝からケーキワンホールを食して、胸焼けする運命など、今は知らずに眠りに落ちる。



榛さんに贈ったお誕生日SS。
メッツピオです。……どこにもメッツともピオとも記載しませんでしたが……もちろんわざとですよ?


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