深酒の後悔

 新年会を開こうといいだしたのは、面白いこと好きのピオニーだった。
「新年会でしたら、毎年嫌になるほどしていらっしゃるでしょう?」
「あんな肩の凝るだけの祭なんて楽しめるかっ!」
 年末から年始にかけて皇帝であるピオニーは国事に借り出され、それこそ休む暇もないが、名目上は“新年会”となっている。だが、そんなものに満足できないというピオニーのわがままにより、気の置けない内輪のみを集め、宴会が催された。
 ようするにただ呑んで騒ぎたいというそれだけなのだが、杯に次々と酒を注ぐピオニーにより、皆つぶれ、生き残っているのは、ただ二人。
「ジェイド、もっと呑め〜」
「呑んでいますよ」
 すっかり酔っ払いと化したピオニーがジェイドに絡む。
 頬を赤く染め、ジェイドにもたれかかっていた。
 寄りかかられているジェイドはというと、琥珀色の液体を手に持ち、時折口に運ぶものの全くといっていいほど酔っている様子がない。
「ジェイド〜つまんないぞ〜。お前全然酔ってないだろ」
「…………酔っていますよ」
「嘘付け」
「おや、どうして嘘だと思うのですか」
「いつもと全然変わっていないじゃねーかよ」
「はは、実は酔っているんですよ〜。だからもうお開きにしましょうね」
「証明してみろ」
「証明しろと……酔っているのを?」
「そうだ、今日こそはお前を潰すからなぁ」
「困りましたねぇ〜」
 杯に残った酒を煽ったものの、やはり酔っている様子はない。
「ん、ジェイド」
 そろそろ眠くなってきたのか、とろけた瞳でますますしだれかかる。そんなピオニーをしばし眺めていたジェイドだったが、口元に笑みを浮かべる。
「……簡単な方法がありましたね」
「なに?」
 ピオニーの頤に指をかけると上向かせる。
「ジ、ジェイド?! 何す……ん」
 深く口付けられ、ピオニーがあわてる。
「他のヤツラが目を覚ますかもしれないだろうが……」
「関係ありませんよ」
「ジ、ジェイドっ」
 本気でまっすぐ見つめられ思わずようやく危険を察したものの時すでに遅し。
「酔っているので、歯止めはききませんよ」
 今は悪魔のごとく映る笑みにようやく深酒の後悔をする。



書いたのが一年前というあげるのが遅すぎな酔っ払いネタ。
陛下はお酒に弱くてもいいけど、強くてもいい。……つまりどっちでもいい。
ジェイドはどちらにしろワクだろうなぁ……。


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