エドワード四歳。 今、彼の目の前には憎き敵がいる。 ――牛乳である。 小さな両の拳を握りしめ、にらんで見たところで、消えるわけではない。 「飲まないと背が伸びないわよ」 母の一言は、背を気にし始めていたエドワードを更に苦悩させることなる――。 エドワード八歳。 一つ違いのアルフォンスとエドワードは誰が見ても、すぐに兄弟だというほど よく似いている。ただ――。 「あら、お兄さんの方が小さいのね」 二人並ぶと決まって言われるこの言葉はエドワードに見えない重石を追加した。 ――そして。 エドワード十二歳。 「あいからず、チビね」 幼馴染の一言は、エドワードに確実に止めを刺した。 「誰がミジンコチビか――ッ!」 言われ続けた言葉と――、 好キナ女ノ子ヨリ背ガ高クナリタイ 無意識な願望が、 エドワード・エルリック君、15歳のコンプレックスを形成している。 《終》
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