silent rain


雨は嫌いだ

 灰色の空からやむことなく降り注ぐ雫が、1つ、2つ、――1つ、2つ。繰り返し、繰り返し、止むことなく、この手のひらに、頬に、髪の先まで――冷たく凍えさせていくのだ。

 部屋には窓が一つ。外も中も沈んだ色。天井は低く、単調な音だけが、オレの中に染みこんでいく。
 ――――まだ元には戻れていないんだね。
 その一言が、やむことなき雨音が……イタイ。
 静寂が、右肩と左足に微かな違和感の鈍さを訴える。
 単調に、途切れることなく、続く痛み。
 後悔しているわけではない。
 ……どんなに苦難の道であろうとも、何があろうと二人で元に戻る……と、そう決めた。
 ……後悔はしていない。……ただ、時折傷口が傷むのだ。
 何かを思い出させるかのように。

 左足と同じ色の空へと、ゆっくりと、視線を動かした。

「兄さん、でかけるの?」
「少しだけ出かけてくる」
「…………雨好きだね」
 振り向かずにうなずき、雨の中へと走りだした。
 冷たい雫は、この手も頬もすべてぬらしていく。
 肌をすべる水滴の感触も。
 寒さに疼く傷の痛みも――。
 ――――兄さん。
 アイツにないのだ。
 ……一日でも早く戻してやると。
 今日のような雨の日に犯した過ちを取り戻すために。
 雨の痛みが、決意の確認をこの身に刻みこむ。



《終》







当初、無能大佐が「雨の日は役立たずなんですから」と、言われている話にする予定だったのになぁ……。
どこをどう間違ったかこんな話に……。


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