破られた不可侵条約
※10年後・例の扉ネタ

ビー ビー ビー
モニタールームにけたたましい警戒音が鳴り響いた。
「何の音だ!」
「今、確認中です!」
その音で、その場は一気に騒然となった。

……またかよ。
オレはウンザリした気持ちで深いため息を吐いた。
それは隣にいる獄寺君も同じ気持ちらしく、
複雑そうな視線をオレに向ける。
いや、そんな視線向けられても、何も出来ないから。

「判明しました! 例の通路が開かれた模様です!」
「例の……風紀財団の通路か!」
……やっぱり。
オレの口から更に深ーく長ーいため息がこぼれても、
この場合、許されるよな…

オレ達の秘密基地(とオレはこっそり呼んでる)と
ヒバリさんの秘密基地は一つの扉で繋がっている。
だけど、ヒバリさんと不可侵規定があるから、オレ達が扉を開く事はないし、
ヒバリさん達も、開けた事はない。

逆に言えば、あの扉が開かれる時は、のっぴきならない状況な訳で、
だから、開かれると同時に警報を鳴らす事にした。
秘密基地にいる人間に警戒を促す為に。
だけど…

「…あの…十代目…非常に申し上げにくいんですが……」
部下の一人が僕の元へとやってきて声を掛けてくる。
すっごく戸惑っていて、見ているこっちが可哀相になる。
だから、オレはこの10年間で磨きに磨きをかけたスペシャルボス笑顔を浮かべて
報告してきた部下に言った。
「ああ、いいよ。判ってるから。そのまま通してあげて」
「はい、判りました!」
元気に自分の席に戻る部下。
ふっ、どーだ、この威力!

そんな事を思っていたら携帯の着信が鳴った。
ディスプレイには……うわぁ! 出たくねーっ!
言われる事、想像つくし!
だけど、このまま居留守を使ったら、きっと酷い目にあうし!

「……お久しぶりです、ヒバリさん」
『あの扉を使うのを止めるように言っておいて』
やっぱり!
「いや、そんな事、オレに言われても、本人に言って下さいよ!」
『聞かないから、君に言ってるんだよ。兎に角、次に使ったら、君を咬み殺すから』
「ちょっ、ちょっと待って下さいよ!」
何で、オレ!? どうして、オレ!?
咬み殺すなら、扉を開ける張本人に言ってくださいよ!
だけど、オレが全てを言い終わる前に電話は無常にもプツっと切られる。

結局さー、ヒバリさんのこれって、ただのヤキモチなんだよなー。
別にヤキモチ妬くなとは言わないけどさ、
その度にオレに八つ当たりするの止めて欲しいよな、ホント。

「よお、久しぶりだな、ツナ!」
ああ、来たよ。諸悪の根源。
「……ディーノさん。頼みますから、ヒバリさんの所からウチに来るのに、
あの通路を使うの、やめて貰えませんか?」
「別にいいじゃねーか。あれが一番近道なんだよ」
悪びれもせず、それは眩しい笑顔で言ってのける。
うん、予想通りの反応。
ヒバリさんも意外に判ってないよなー…
ヒバリさんが言って無理ならオレが言っても無理に決まってるよ。
あの人の優先順位って
リボーン→ロマーリオさん・ヒバリさんとリコさん→オレだもんなー。

オレ、次にディーノさんが来た時、朝日を拝めるんだろうか?
…無理な気がしてきた。
絶望的な気分のまま、でも、まだ死にたくないから
暫くトレーニングルームに篭って修行しよう。

その前に、ジャンニーニに言って、センサーを切って貰おう。
開かれる度に、この騒ぎじゃ堪らないから…


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どんなに駄目と言われてもディノさんは使い続けるといい。
そしてその度にツナが酷い目にあうといい。




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