2008年5月12日 中国、四川省Wenchuan地震


このページは、個人的な解釈を載せています。個々の情報はあとから訂正されることもありますので、あくまで参考としてご覧下さい。

1980年中国烈度階(日本語訳PDFファイル,12KB)訳、石川有三・白玲


中国地震局による震度分布図。図例の烈度「XI」,「X」,「IX」,「VIII」,「VII」,「VI」は、それぞれ中国の震度階で11,10,9,8,7,6です。図をクリックすると大きな図が表示されます。

USGSの震源カタログ(世界標準時、主に2006年以降を使用)と中国に震源カタログ(日本時間に変更済み、主に2005年まで)では、Mが異なる場合が多いので、注意して下さい。
USGSの震源カタログによる震央分布と今回の地震の震源位置(×印)。この図では、M7.8となっていますが、ハーバードのMwは、7.9、中国では、Ms8.0とされています。四川省中央部を通り、雲南省を南北に貫く「南北地震帯」の中に震源は位置しました。

紀元元年以降で犠牲者1万人以上を出した地震の震源分布。上の震源分布図と見比べると分布傾向の違いが明瞭。震源は西部に多いが、犠牲者が多い地震は中央から東だけに分布する。人口稠密地域でときどき起きる大地震が、大被害をもたらしていることがよく分かり。

中国の地震活動度を見るために日本からチベットにかけての震源数の比較を行った。米国地質調査所の震源カタログを使い、1970年以降でM5以上の震源分布を上に示した。上の図の地図中で枠で囲った範囲の中の震源を直線ABに投影して、そのぞれの場所での震源数を縦軸に示したのが下の図(1目盛り1000個)。今回の震源位置付近は、中国の中ではやや震源の多い地域であるチベット高原の東の端にあたるが、日本列島と比べると多くないのは一目瞭然である。

USGSの震源カタログによる本震と余震分布。本震(06:28UTC)から6月1日までの余震分布。長い方は、300kmを越えて北西へ伸びた。余震分布は、明瞭に2つに別れて分布している。陝西省と重慶市は、本震の震源(○印)からは同じ程度離れているが、震源断層からは陝西省やその西隣の甘粛省が近く、これらの省では大きな被害が出ていることが理解できる。今回のような巨大地震の場合、震源位置を○や×の点だけで示したのでは、被害分布を正しく理解できない。震源断層のような広がりを持った面で示す方が良い。

余震域をNE-SWに沿って切り出した時空間分布図。下が南西側で、上が北東側。本震発生直後から余震はかなり北東側へ拡大していたことが分かる。

余震のマグニチュードと時間の図。横軸の目盛りは、日。

余震分布のクロースアップと地形。地形データは、NOAAのETOPO2を使用。

四川省の1000年以降で本震までの震源分布。長方形は、上の余震分布から推定した長さ300kmの震源断層。龍門山断層の中部から南部にかけて震源がかなり分布しており、地震活動から見る限り龍門山断層が活断層でないとは思えない。

ハーバード大学によるCMT解。東西方向の圧縮軸を持つ逆断層である。上の余震分布と一緒に見ると、NNE-SSW走向の北西へ傾斜する面が震源断層と推定される。

中国の震源カタログ(2006年以降は、USGSのカタログ)による1900年以降のM4以上の震源分布。

同上でM5以上の震源分布。図中の枠は、南北地震帯をやや広めに取った地域で、以下にこの中の地域の地震の時空間図とM-T(マグニチュードー時間)図を示す。

上図の枠内の時空間分布図。南北地震帯で北部の活動はこの30年間余り静穏であったことが分かる。

上図の枠内のマグニチュードー時間の図。1970年代以前は、M7以上の地震がかなり起きていたことが分かる。

1700年以降のマグニチュード7以上の付近で起きた地震の震源分布図。今回の地震の震源に一番近い1933年8月25日M7.5の地震では、6865人の犠牲者が出ている。2005年以前は日本時間で、それ以降は世界標準時。

紀元元年以降のマグニチュード6.5以上の付近で起きた地震の震源分布図。今回の震源に一番近いのは、1657年にやや北東で起きたM6.5。ただし、ここは今回の地震の余震域に含まれると思われる。

Wang&Ye(2006)によるGPSから求めた地殻の動き。どこを固定点にしていたのか忘れましたが、相対的な動きの参考にしてください。

ハーバード大学のCMT解によるP軸(圧縮軸)の水平方位分布。ハーバード大のMwは7.9。青線は、地表プレート境界線。インドのユーラシアへの衝突により、チベットが南北に圧縮され、東側と西側へ押し出されている様子が想像できる。今回の地震は、四川側へ押し出された地殻が四川盆地へ乗り上げたことによる。

ハーバード大学のCMT解によるT軸(張力軸)の水平方位分布。



中国の地震関連情報

中国の地震速報(中国地震局:中国語)

中国地震局
1971年設立された。当時は「国家地震局(State Seismological Burea:SSB)」と呼ばれた。1998年に「中国地震局(China Seismological Bureau:CSB)」と変更された。その後、2004年から英語表現だけが変更され「China Earthquake Administration(CEA)」となった。

中国地震局地球物理研究所   同 分析予報センター(2004年7月1日から地震予測研究所と改称)
 同 地質研究所    同 工程力学研究所(ハルピン市)
四川省地震局  雲南省地震局 

北京大学地球物理学部  中国地質大学


中国大陸深層科学ボーリング(江蘇省東海県)

中国科学院地質与地球物理研究所

「各種報告」
・中国の地震   石川有三,地震ジャーナル,2008,No.46,p20-28.
・四川大地震の起こり方と震度分布   石川有三,消防科学と情報,2008,No.94,p17-21.
・中国の地震と地震予知   石川有三,なゐふる,2008,No.69,p6-7.
・中国の震度階   石川有三・白玲,日本地震学会ニュースレター,2008,20巻,2号,23-24.
・中国海城地震の予知成功   石川有三      関西サイエンスフォーラム,2007.
・中国におけるアクロス開発   石川有三       月刊地球,2004,号外No.47,156-159.
・中国の地震防災対策   高梨成子・大西一嘉・石川有三 月刊地球,2002,No.8,531-533.
・中国の地殻活動観測網  石川有三・大西一嘉・高梨成子 月刊地球,2002,No.8,561-567.
・中国の地震予知と対応  高梨成子・石川有三・大西一嘉 月刊地球,2002,No.8,568-575.
・中国チベット高原でマグニチュード8の巨大地震!  石川有三  なゐふる30号.2002年3月
・中国地震学会参加報告      石川有三   地震学会ニュースレター,1995,6,6,18-19.
・1993年東アジア地震学合同大会(鳥取)報告   地震学会ニュースレター,1994,6,1,6-7.
・中国版地震予知連の出席報告    石川有三   地震学会ニュースレター,1993,4,6,16-17.
・ある地震誤報の教訓(翻訳)     石川有三  地震ジャーナル,1992,12,31-33.
・中国のサイスミシティ・マップ       石川有三  地震学会ニュースレター,1991,2,5,9-10.
・中国の地震予知              石川有三  地震ジャーナル,1991,12,1-7.
・南京地震台の17トン・ウィーヘルト地震計  石川有三  地震学会ニュースレター,1990,1,5,59-60.
・日中地震学会合同大会報告      石川有三  地震学会ニュースレター,1989,1,1,16-17.
・中国における地震予知デマ報道とその対策(翻訳)
                     石川有三  神奈川県温泉地学研究所報告,1982,14,57-62.
・中国の地震予知の現状      石川有三・尾池和夫 自然1980年12月号60-69.
中国の地震対策-その1.   高橋博  地質ニュース(1980),No315, p38.
中国の地震予知      尾池和夫 日本放送出版協会(1978).
  (書籍は絶版だが、この京大学術情報リポジトリで見ることが出来る)
・1977年地震学会訪中代表団報告集     地震学会,1978,154pp.
・中国地震考察団講演論文集「中国の地震事業及び海城地震の予知・予報と防災」
    地震学会,1976,83pp.