2003 初春 福島 廣木酒造本店

 お世話になっている“はせがわ酒店”さんのバスツアーに参加した。

 団体での行動には抵抗あったが、どうしても行って見たかった蔵があったので

参加させて頂いた。。。“飛露喜”を醸す廣木酒造本店がそれだ。

代表兼杜氏の廣木健司さんとは、以前立ち話程度だが話す機会があり、

熱い人というのが印象的だった。

朝方まで仕事だったが、朝の東京発のバスに乗る。

車中は爆睡zzz。

途中、栃木・松井酒造店に寄る。“松の寿”を醸している蔵だ。

二手に別れ、蔵を案内させてもらう。地元酒としての生産の方が多いのだと。

正直、口にした事がなかったので興味津々。最近少しずつ自社の米を

耕し使用しているとの事(五百万石)。本来あるべき一貫造りだ。

そういう姿勢には心が打たれる。“まだ勉強中です”と息子さんの松井宣喜さん。

飲んでみた。少し土を感じるホッとする味だ。

 大都会での自分の酒の評価を気にしていたが、真面目な造りをモットーにしている姿勢こそが

 都会に限らず愛される酒だと、生意気にもその様な話をした。

 今日の夜の宴会に顔を出すという事なので、またお話しましょうと約束。

 時間になり、蔵を後にした。。。

 

 雪景色が少し見え始め、猪苗代湖が遠くに見える。

 会津磐梯山の山頂にも白い帽子がかかっている。

 天気にも恵まれバスの窓が開くものだったら、新鮮な冷気を体に吸い込んでみたかった。

 眠かったはずの体も、酒の勢いか?これからの期待感か?完全に目が醒めている。

 街中へとバスは進む。大型のバスのせいか珍しそうな目で、お婆さんがこちらを見ている。

 なんとも・・・。
会津街道に面して“泉川”の文字が見える。

 地元酒として“泉川”が今も愛させれいる。
着いた。廣木さんが出迎える。早速玄関から入る。

 そこには“もっきり酒”を飲ませてたらしいカウンターが今も存在感たっぷりに居座る。

 お母さんが慌しくお茶を用意してくれている。天井の高く柱が黒光している古い造り。

 こういったものに目のないオイラには羨ましく思える。

 その部屋の後ろで“飛露喜”は仕込んでいる。

 斗瓶を洗っている蔵人を見ているだけで何だか興奮してしまう。

 廣木さんから説明をもらう。

 蒸しには特に気を使うとの事・出麹までも他の蔵より長めにとっていて、
 
 じっくり破精込ませているとの事。

 今年の飛露喜を試飲。

 う・旨い。弾けそうでギリギリ、旨みが程よくのり、スッと切れる。

 特に今年は、旨みが良い意味でのっかってきた感じ。

 “はせがわ”の社長も納得の笑み。

 また、今年から吟醸造りを始めた。頂く。。。降参です。

 細かい事まで聞きたかったが、まあ人も多かったので遠慮し、先ほどの松井さん同様

 後の、宴会でと約束した。

 途中、玄関先に地元の人が、“一本くれ”と“泉川”を買いにきた声に、

 嬉しさとコレで良いのだと。。。


 
おいおい何で二人とも、こんなに堅い表情に・・・。

 ホテルに到着。流石に少し疲れ、同部屋の仲間と風呂へ

 皆、世代が近く、ちょっとビール飲みたいなと風呂あがりに約束。

 風呂上りだけは、やっぱりビールだなぁ。。。

 浴衣に着替え宴会会場へ。。。

 松井さん、廣木さん登場で乾杯。乾杯はやはり清酒で、オイラは松井さんの吟醸酒。

 一息ついたとこで、早速松井さんと色々と語り合う。

 熱心に飲み手側の意見を聞き入れている、参考にしたいからと

 腰は低いが、“旨い酒を造りたい”という心情が言葉の一つ一つに感じられる。

 来年度の酒がとても楽しみに思える。

 

 会は終わったが、その後まだまだ元気な部屋の若人は?

飲み続け一人二人と落ちていった。

さぁて、まだ廣木さんが“はせがわ”社長と部屋で飲んでると聞いたので

先ほどは人が多く遠慮していたが、突撃した。

2時間位、廣木さんと話をした。

逆に、廣木さんから質問攻め(笑)をもらい、自分なりの今の日本酒のあり方を

語り、その度、廣木さん自身、腹を割って話してくださった。

大変有意義な時間を過ごさせて頂いた。

やはり熱い人だった。飛露喜の現状も本人が一番理解していた。

これだけ人気になっても向上心は失わず、世界も見ている。

一本頂戴と来る地元としての酒も忘れてなかった。


もう、割り込んでくるんだから・・・まっOKです。

かなり遅い時間になっていたので、廣木さんをエレベーターまで送り

握手を交わし、お互い頑張りましょうと。来て良かった。

部屋に戻ると皆、死んでいた(笑)

 

廣木さんの無濾過生は今も健在だが、また新たなチャレンジを期待し

床につく。

 少し頭が痛いが(笑)大満足の酔っ払いで就寝。

 

 以外に、二日酔いでない。

 朝食をしっかり食べ・風呂に浸かる。

 栃木・小林杢三郎商店に寄る。“七井”“大英雄”を醸している蔵だ。

 あいにくの雨だが、かなり栄えた街並みである事が、バスの窓からもわかる。

 大きくUターンした。うむっ!?驚いた。

宇都宮の市内にあり、失礼ながらこんな街中に・・が印象だ。

玄関を上る。代表の小林 丘さんが迎えてくれた。

部屋の中は、昔の作家はこの様な住まいで、文章を書いていたのではと思う造りだった。

縁側と雨の微妙な感じが・・・その前に“大英雄”吟醸・大吟と並んでいる。

とても美しい瓶である。何でも古いのが好きなオイラだが、

都会のバーでも置けそうなラベル・瓶である。

試飲・香味とまろやかさがバランス良く感じる。美しい酒と言うべきかな。

特に、精米50%以下のものは、とても綺麗な酒で、瓶の印象とダブらせる。

飲んでから蔵の中へお邪魔した。杜氏・小林 一仁さんと挨拶。丘さんの息子さんだ。

銘酒・東一で修行なされ帰ってきたと。。。

地元五百万石を中心に山田錦・松山三井・最近は合鴨農法の美山錦の使用など、

米の性質を見極め、勉強中との事。

どの蔵もそうだが、特に一仁さんは、睡眠時間が少なそうだ。

今、若手だけで造りをしていて、何から何まで目を配らせているといった印象を受ける。

今のタンクでは大き過ぎるので750Kのタンクに変えたいとの事。

一仁さんの中で、色んな構想が張り巡らされ、理想の酒を目指している。

来年・再来年と飲んでみたい酒の一つになった。

また、今回は行けなかったが、郊外にある大谷石採堀跡の地下50Mの貯蔵庫は

大変興味深い話であった。そこで寝かすと“まるみ”が出るのだと・・・。

 

東京に着く。社内爆睡。地元到着。馴染みの店で独り酒。

 

ふー。寝ますか・・・。