邦題 | 『運命のコイン』上下 |
原作者 | ジェフリー・アーチャー |
原題 | Heads You Win(2018) |
訳者 | 戸田裕之 |
出版社 | 新潮社 |
出版年 | 2019/11/1 |
面白度 | ★★ |
主人公 レニングラード生まれの青年アレクサンドル・カルペンコ(別名サーシャまたはアレックス)。1968年から1999年までの活躍を描いている。 事件 アレクサンドルは父が惨殺されたことから、母エリーナと共に国を捨てることにした。コインの表が出たら米国、裏が出たら英国へ。アレクサンドルの明晰な頭脳とエリーナの卓抜した料理の腕前で二人は新天地で頭角を現して行くが……。 背景 著者得意の主人公の一代記物。著者自身は『カインとアベル』のような「サーガ」物と称しているそうだ。相変わらずのストーリー・テラーなので一気に読めてしまうものの印象は薄い。最大のポイントは最後の1行だが、長編小説の結末としてはあまりに軽いネタだ。 |
邦題 | 『ヴァイオリン職人と消えた北欧楽器』 |
原作者 | ポール・アダム |
原題 | The Hardanger Riddle(2018) |
訳者 | 青木悦子 |
出版社 | 東京創元社 |
出版年 | 2019/11/29 |
面白度 | ★★ |
主人公 イタリア、クレモナのヴァイオリン職人ジョヴァンニ(ジャンニ)・カスティリョーネ。シリーズ・キャラクター。共演はクレモナ警察の刑事アントニオ・グァスタフェステ。 事件 国際ヴァイオリン製作学校の講師でもあるジャンニは、20年前の教え子であるノルウェー人リカルドの講演を聴いたが、リカルドはその夜何者かに殺害され、彼の北欧楽器ハルダンゲル・フィドルが盗まれたのだ。ジャンニらは捜査でノルウェーに向かうが……。 背景 シリーズ第三作。珍しい点は、英米での出版はなく日本向けの原稿を翻訳したこと。前二作は知的なコージー・ミステリーとして欧米より評価されたからであろう。ただし本作では、ヴァイオリンやクラシック音楽への蘊蓄が、謎解きの貧弱さをカバーするまでには至っていない。 |
邦題 | 『陰謀の島』 |
原作者 | マイケル・イネス |
原題 | The Daffodil Affair(1942) |
訳者 | 福森典子 |
出版社 | 論創社 |
出版年 | 2019/12/10 |
面白度 | ★★★ |
主人公 ロンドン警視庁の刑事ジョン・アプルビイ。同じ刑事ハドスピスも協力する。 事件 警視監の依頼でアプルビイは、盗まれた馬ダフォディルの捜索でハロゲイトに向かった。ダフォディルは駄馬に過ぎないものの、数字を理解できるという不思議な能力を持っていたのだ。だがこのところ少女が連続で失踪したり、幽霊屋敷が一軒丸ごと盗まれていたこともわかった。どうやらある男がそれらの人間や動物を南米の島に移送しているらしい……。 背景 著者の8作目だが、大学や田舎屋敷を舞台にした最初期の謎解き小説とは全く異なる、一種のファンタジックな冒険小説だが、一言で言えば怪作! 四部構成の第一部は文句なしに誰でも楽しめるが、以後は読者の好みで評価がかなり割れそうな作品だ。 |
邦題 | 『メドゥーサ』 |
原作者 | E・H・ヴィシャック |
原題 | Medusa(1929) |
訳者 | 安原和見 |
出版社 | 書苑新社 |
出版年 | 2019/1/29 |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『必須の疑念』 |
原作者 | コリン・ウィルソン |
原題 | Necessary Doubt(1966) |
訳者 | 井伊順彦 |
出版社 | 論創社 |
出版年 | 2019/3/30 |
面白度 | ★★★ |
主人公 オーストリア人の哲学者カール・ツヴァイク。65歳。戦前はドイツで教授であった。彼を崇拝する若き人妻ナターシャ・ガードナーが助役として魅力十分な活躍をする。 事件 クリスマス・イブのロンドンで、カールはあるホテルから出てきた男に目を留めた。30年以上前の教え子グスタフだ。当時グスタフの上司が彼に全財産を残して不審死していたが、その後も似たような事件が起きていたのを思い出した。グスタフは殺人者なのか? 背景 多才な著者らしい、基本はディスカッション小説だが、ホワイダニットのミステリーとして(謎解きの意外性はないもののも)、それなりに楽しめる。特に人妻ナターシャを登場させて、男女間の機微を巧妙に取り入れた小説作りの上手さには驚かされた。 |
邦題 | 『ロウランド・ハーンの不思議な事件』 |
原作者 | ニコラス・オールド |
原題 | The Incredible Adventures of Rowland Hern(1928) |
訳者 | 小林晋 |
出版社 | ROM |
出版年 | 2019/12/28 |
面白度 | ★★★ |
主人公 探偵はロウランド・ハーンで、ワトスン役は語り手の私。 事件 15本の短編を収録した短編集(1本のみは3章から構成)。「風車」「珍品蒐集家」「失われた都市ラク」「ポッター」*「黒と白」「ポルペーロ老人」「二本の望遠鏡 T終りなき道、U法律と望遠鏡、V星々の復讐」「三本足の男」「巨人笑い」「謎の鬘箱」「見えない凶器」**「ジョン・ケンジントン割腹未遂事件」*「オール・オア・ナッシング」「聖者の罪」 背景 謎の作家の唯一の短編集(他には詩集が出版されているだけ)。これまでに短編は3本(*は雑誌HMMに、**は『これが密室だ!』に)訳されている。チェスタトン流の書き方で、唖然とする作品と思わず拍手したくなる作品の玉石混交だが、著者が異才の人であることは確かだ。 |
邦題 | 『村で噂のミス・シートン』 |
原作者 | ヘロン・カーヴィック |
原題 | Picture Miss Seeton(1968) |
訳者 | 山本やよい |
出版社 | 原書房 |
出版年 | 2019/2/20 |
面白度 | ★★ |
主人公 定年直前の美術教師ミス・シートン。事件捜査の主役は、ロンドン警視庁の警視アラン・デルフィックと同警視庁の部長刑事ボブ・レンジャー。 事件 ミス・シートンは、遺産で手に入れたプラマージェン村のコテージでの休暇を楽しみにしていた。だが持参の傘で悪漢を撃退したのが新聞で評判になり、村では有名人に。そしてロンドンから逃亡した悪漢がシートンを狙って村に来るという噂が広まり……。 背景 ちょっと変わったコージー・ミステリのシリーズ第一作(原作は1968年の出版)。なぜ今頃翻訳かと疑問を持ったが、ミス・マープルとは真逆な人間であるミス・シートンが結構魅力的。本国では作者の死後(1980年に死亡)も別作家がシリーズを引き継いでいることに納得。 |
邦題 | 『ミス・シートンは事件を描く』 |
原作者 | ヘロン・カーヴィック |
原題 | Miss Seeton Draws the Line() |
訳者 | 山本やよい |
出版社 | 原書房 |
出版年 | 2019/4/20 |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『ある醜聞』 |
原作者 | ベルトン・コッブ |
原題 | Scandal at Scotland Yard(1969) |
訳者 | 菱山美穂 |
出版社 | 論創社 |
出版年 | 2019/12/25 |
面白度 | ★★ |
主人公 ロンドン警視庁の警部補ブライアン・アーミテージ。妻は部長刑事のキティー。ブライアンが最も信頼している上司はチェビオット・バーマン警視正。 事件 ブライアンは緊急の仕事で直属上司が滞在するホテルに車で向かった。だが到着直前に若い女性と接触事故を起こした。彼はその女性を上司の秘書と認識したが、相手は否定しホテルへ。上司の愛人と疑ったブライアンだが、翌日その女性が他殺死体で見つかったのだ。 背景 『消えた犠牲』に続く60年振りの邦訳第2弾。警視庁という職場内のスキャンダルを巡る殺人事件を扱っている。多作な作者らしく手慣れた筆致で物語は進むが、いかんせん容疑者が少ないのでプロットの展開が読めてしまい、意外な結末にはなっていない。 |
邦題 | 『キャッスルフォード』 |
原作者 | J・J・コニントン |
原題 | The Castleford Conundrum(1932) |
訳者 | 板垣節子 |
出版社 | 論創社 |
出版年 | 2019/8/30 |
面白度 | ★★★ |
主人公 謎解きをするのは、シリーズ・キャラクターの警察署長クリントン・ドリフィールド卿。相棒は治安判事のウェンドーヴァー。 事件 屋敷の女主人ウィニフレッドは、最初の夫から莫大な財産を相続し、その後画家のキャッスルフォードと再婚。だが彼女の愛情が薄れるなか、彼女は遺言書の書き換えを検討し始めると山小屋で銃弾に斃れ、新旧の遺言書は消えていた。事故死か他殺か? 背景 戦前の抄訳を含めると5冊目の訳書。1926年出版の第一作『或る豪邸主の死』から数えて本書は12冊目の謎解き小説。事件を巡る人間関係の設定は上手いものの、血液型チェックの杜撰さなどからも明らかなように警察の捜査活動には疑問符が付く。犯人の意外性もイマイチ。 |
邦題 | 『鼻持ちならぬバシントン』 |
原作者 | サキ |
原題 | Unbearable Bassington(1912) |
訳者 | 花輪 涼子 |
出版社 | 彩流社 |
出版年 | 2019/7/17 |
面白度 | ★★★ |
主人公 母フランチェスカ・バリントンと一人息子コーモス・バリントン。二人とも落ちぶれつつある上流階級に属している。 事件 フランチェスカは、見掛けの良い息子コーモスが金持ちの女性と結婚することを露骨に望んでいた。だが旧友の姪との婚約は失敗に終わり、新たに金持ちのイレーヌに目を付けた。イレーヌも当初コーモスに好意を持つが、コーモスの友人との三角関係に発展し……。 背景 短編が得意なサキも、生涯に長編を二冊書いているそうだ。そのうち本書は、母子関係や男二人・女一人の三角関係を、サキらしいユーモアと皮肉を込めて描いた風俗小説。クリスティにも自伝的要素の濃い普通小説『未完の肖像』があるので、リストに含めてみた。 |
邦題 | 『ウィリアムが来た時』 |
原作者 | サキ |
原題 | When William Came(1913) |
訳者 | 深町悟 |
出版社 | 国書刊行会 |
出版年 | 2019/6/25 |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『十二の奇妙な物語』 |
原作者 | サッパー |
原題 | The Dinner Club(1923) |
訳者 | 金井美子 |
出版社 | 論創社 |
出版年 | 2019/9/30 |
面白度 | ★★★ |
主人公 12本の短編からなる短編集。前半6本は特殊なクラブで会員が興味を引く話を披露するという設定。後半6本はクラブには無関係な話。 事件 「俳優の話 キルトの布きれ」「弁護士の話 サー・エドワード・ショーハムの決断」「医者の話 死の宣告」「一市民の話 死の笛」「軍人の話 オレンジの皮の切れ端」「作家の話 アップルドアの花園」「古びたダイニングルーム」「曲者同志」「ジミー・レスブリッジの誘惑」「レディ・シンシアと世捨て人」「ウィスキーのグラス」「酔えない男」 背景 クリスティの『火曜クラブ』やアシモフの『黒後家蜘蛛の会』の先駆けのような短編集。最大の違いは、話者の語りだけで物語が終わってしまう点。語り口は達者。 |
邦題 | 『銀の墓碑銘』 |
原作者 | メアリー・スチュアート |
原題 | My Brother Michael(1960) |
訳者 | 木村浩美 |
出版社 | 論創社 |
出版年 | 2019/4/30 |
面白度 | ★★★ |
主人公 ギリシャを旅行中の冒険心旺盛な英国人カミラ・ヘイヴン。女学校の古典語教師だが、横柄な婚約者に6年間もおとなしく従っていた女性だった。本編の語り手。 事件 婚約解消したカミラは、突然アテネの街中で、デルフィにレンタカーを送り付ける雑用を押し付けられた。送り先は、第二次大戦中に殺害された兄の死の真相を探っていた英国人サイモンであったが、本人はそのような依頼はしていないという。何故、依頼されたのか? 背景 『この荒々しい魔術』(1970年訳出)が忘れがたい著者の邦訳第3弾。当時のギリシャ情勢が巧みに描かれた一種の冒険ロマンス物。カミラの言動にはもう少し魅力が欲しいところで、その年のCWA賞を『モルダウの黒き流れ』に譲ったのも頷けるものがある。 |
邦題 | 『パスカル夫人の秘密』 |
原作者 | ウィリアム・スティーヴンス・ヘイワード |
原題 | Revelations of a Lady Detective (1864) |
訳者 | 平山雄一 |
出版社 | ヒラヤマ探偵文庫 |
出版年 | 2019/5 |
面白度 | ★★ |
主人公 スコットランド・ヤードの女性警察官パスカル夫人。40歳前後。 事件 10本の短編からなる短編集。「謎の伯爵夫人」「秘密結社」「ダイヤモンド盗難事件」「盗まれた手紙」「修道女・遺言状・女子修道院」「どちらが相続人?」「溺死」「五十ポンドの賞金」「人違い」「匿名の女」の10本。 背景 クイーンが歴史的重要性や文学的価値、稀覯性から選んだ短編集のリストである「クイーンの定員」の5番目の短編集。女性探偵の第一号というのが選ばれた理由のようだ。21世紀の現在から評価すると、ミステリー短編としてはほとんが凡作の一言。ただし英国ヴィクトリア朝の世態風俗に興味のある人には、それなりに面白いはずだ。 |
邦題 | 『眺海の館』 |
原作者 | ロバート・ルイス・スティーヴンソン |
原題 | The Pavilion on the Links and Other Stories(1900) |
訳者 | 井伊順彦編訳 |
出版社 | 論創社 |
出版年 | 2019/7/30 |
面白度 | ★★★ |
主人公 『新アラビアン夜話』第2巻所収の短編4本を中心にして纏められた、日本で独自に編集された短編集。短編6本と『寓話』(寓話が20本)からなる。 事件 「眺海の館」(Pavilion on the Links)「一夜の宿り」(A Lodging for the Night)「マレトロワ邸の扉」(The Sire de Maletroits Door)「神慮はギターとともに」(Providence and the Guitar)『寓話』(Fables)「宿なし女」(The Waif Woman)「慈善市」(The Charity Bazaar) 背景 最後の「慈善市」のみ本邦初訳(内容は寓話めいた短い戯曲。平凡作)。かつて「臨海楼綺譚」という題で訳された冒頭作品は、やはり著者らしいサスペンスに富んだ冒険小説で楽しめる。残りの作品はミステリーとは言い難いが、読んでも損はないだろう。 |
邦題 | 『イヴリン嬢は七回殺される』 |
原作者 | スチュアート・タートン |
原題 | The Seven Deaths of Evelyn Hardcastle(2018) |
訳者 | 三角和代 |
出版社 | 文藝春秋 |
出版年 | 2019/8/10 |
面白度 | ★★ |
主人公 語り手の「わたし」だが、毎日「わたし」の人格が入れ替わるので誰とはいえない。 事件 ハードカースル家に招かれた客は、森の中の<ブラックヒース館>に滞在していた。わたしはその館に辿り着いたとき、記憶がなく意識を失うが、目覚めると同じ日の朝の時間に戻っていて、自分の意識が別の人間に宿っていたのだ。そして「今夜イヴリンが殺されるが、その謎を解かない限り、毎日同じことを繰り返すループを抜け出せない」ことを知るが……。 背景 SF的なプロットながら、語り口は謎解き小説そのものといったオリジナリティのあるミステリー。ただ個人的には風俗小説味のミステリーが好きなので、あまり評価はできない。また展開が複雑すぎるので、私のような高齢者には一読で理解できない難しさがある。 |
邦題 | 『ミッドナイト・ライン』上下 |
原作者 | リー・チャイルド |
原題 | The Midnight Line(2017) |
訳者 | 青木創 |
出版社 | 講談社 |
出版年 | 2019/4/16 |
面白度 | ★★★★ |
主人公 お馴染みのジャック・リーチャー。放浪の旅を続ける元憲兵隊指揮官。 事件 陸軍士官学校の卒業生に授与される記念クラスリングが質屋で売られているのを見つけたリーチャーは、リングに刻まれた卒業年とイニシャルを手掛かりに持ち主を探そうとした。そして双子の美人姉妹の姉だろうと推測したが、彼女はアジア勤務で重傷を負っていたのだった。 背景 シリーズ22作目。今回の舞台はワイオミングの荒涼地帯。その上背景にはイラクやアフガニスタン派兵による戦傷の影響が色濃く反映されている。いかにも米国ミステリらしい設定だが、リーチャーの落ち着いた行動には英国ミステリらしい雰囲気を感じる。というわけで、著者は英国生まれの米国籍作家だが、やはり本シリーズは英国ミステリに入れておきたい。 |
邦題 | 『55』 |
原作者 | ジェイムズ・デラーギー |
原題 | 55(2019) |
訳者 | 田畑あや子 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 2019/12/25 |
面白度 | ★★★ |
主人公 西オーストラリア州内陸にあるウィルブルック警察署の巡査部長チャンドラー・ジェンキンズ。30代で現在は離婚し、娘と息子の二人を引き取って育てている。 事件 突然、血塗れの男が署に駆け込んできた。山小屋に監禁され「お前が55番になる」と脅かされたが、命からがら逃げてきたという。だが間もなく、先の男が犯人と言った通りの男が現れ、犯人と被害者が入れ替わっただけで、先の男が54人を殺した殺人鬼と言ったのだ! 背景 新人の第一作。元々は脚本家だったそうで、読者を引き付けるこの冒頭のシーンは手慣れたもの。しかしこの刺激的な謎はあまり生かされないまま、普通の警察小説に移行してしまうのは残念。でも減点はチャンドラーの現上司(元同僚)や前妻の魅力不足か。 |
邦題 | 『七人の暗殺者』 |
原作者 | エイダン・トルーヘン |
原題 | The Price You Pay(2018) |
訳者 | 三角和代 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 2019/10/15 |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『堕落刑事』 |
原作者 | ジョセフ・ノックス |
原題 | Sirens(2017) |
訳者 | 池田真紀子 |
出版社 | 新潮社 |
出版年 | 2019/9/1 |
面白度 | ★★★ |
主人公 マンチェスター市警巡査のエイダン・ウェイツ(エイド)。押収品のドラッグをくすねてしまったために、上司から解雇か危険な潜入捜査かを迫られた。 事件 ウェイツの任務は街に跋扈する麻薬組織に潜入し、組織の若き帝王カーヴァ―をスパイすることであったが、その組織に引き込まれた裕福な国会議員の娘を助けることも追加されたのだ。彼は首尾よくカーヴァ―主催のパーティーに潜り込み、核心に近づくが……。 背景 新人の警察小説第一作。残念なのは、エイドの設定が悪徳警官ではないものの、それほどの正義感もないという中途半端なこと。これでは読者の共感を呼ばない。マッキンティが創造した警部補ジョーン・ダフィと比較すれば明らかだろう。語り口は上手いだけに、惜しまれる。 |
邦題 | 『カッコーの歌』 |
原作者 | フランシス・ハーディング |
原題 | Cuckoo Song(2014) |
訳者 | 児玉敦子 |
出版社 | 東京創元社 |
出版年 | 2019/1/25 |
面白度 | ★★★ |
主人公 建築家の父親を持つ11歳の長女トリス(テレサ)が主人公だが、9歳の妹ペン(ペニー)もユニークな活躍をする。 事件 トリスは「あと七日」と囁く声を聞きながら目を覚ました。そしてここが家族の別荘で、母親がそばにいることも分かった。どうやら自分はグリモーと呼ばれる沼地から引き揚げられたらしい。だが奇妙なことにトリスは空腹に耐えられず、そばの人形は喋りだすのだった! 背景 『嘘の木』に続く邦訳第2弾。前作同様のファンタジーなのだが、中盤のファンタジックな展開を除くと、前半や終盤はミステリー・ファンにもスリラーとして楽しめる。1920年のイギリスの紳士階級を舞台にした物語設定も興味深い。 |
邦題 | 『潤みと翳り』 |
原作者 | ジェイン・ハーパー |
原題 | Force of Nature(2017) |
訳者 | 青木創 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 2019/8/15 |
面白度 | ★★★ |
主人公 オーストラリア連邦警察官のアーロン・フォーク(三十代の独身)。相棒は同じ職場の連邦警察官カーメン・クーパー(他の男性と結婚直前の女性)。 事件 企業の合宿研修でジララン山脈の森に入った5人の女性が道に迷い、やっとの思いで脱出したときにはその一人が消えていた。何があったのか? 手掛かりはフォークに送られてきた雑音の多いボイス・メール。その中の言葉「彼女を苦しめて」は、事件を暗示していそうだが……。 背景 『渇きと偽り』でデビューした著者の第二作。事件現場は大自然の中の閉鎖空間で、本格ミステリ風の設定だが、謎解きは平凡。対して四日前の行動と事件発生後の捜索を交互に語る展開はサスペンス小説として楽しめる。フォークの個人的魅力はまだ不足している。 |
邦題 | 『正しい恋人』 |
原作者 | B・A・パリス |
原題 | Bring Me Back(2018) |
訳者 | 富永和子 |
出版社 | ハーパー・コリンズ |
出版年 | 2019/3/20 |
面白度 | ★★★ |
主人公 投資コンサルタントのフィン・マッケイド。もう一人は、12年前にフランスで失踪したフィンの恋人で、スコットランドのルイス島出身のレイラ。 事件 フィンの前からレイラは忽然と消えた。必死の捜査も虚しく彼女は死亡とみなされた。だが12年後、レイラが生きているサインが次々と表われ、やがて匿名の不可解なメールが届くようになった。フィンがレイラの姉と結婚しようとしていることと関係があるのか? 背景 『完璧な家』に続く著者の第2作(邦訳も第2作)。前作同様のサイコ・サスペンスで、特に最初からサスペンスフルな展開は上手いものである。ただしイマイチ信頼のおけないフィンには共感しにくく、またなぜそのような事件が起きたかの説明には納得しがたいの弱点。 |
邦題 | 『至妙の殺人』 |
原作者 | L・J・ビーストン、ステイシー・オーモニア |
原題 | 日本独自の編集 |
訳者 | 妹尾アキ夫 |
出版社 | 論創社 |
出版年 | 2019/11/15 |
面白度 | ★★ |
主人公 戦前の雑誌「新青年」で活躍した妹尾アキ夫が訳出した、L・J・ビーストンとステイシー・オーモニアの短編を集めた日本独自の短編集。 事件 ビーストン短編は「ヴォルツリオの審問」「東方の宝」「人間豹」*「約束の刻限」*「敵」「パイプ」*「犯罪の氷の道」*「赤い窓掛」の8本。オーモニア短編は「犯罪の偶発性」「オピンコットが自分を発見した話」「暗い廊下」「ブレースガードル嬢」「撓ゆまぬ母」「墜落」「至妙の殺人」「昔やいづこ」の8本。後ろに*印のある作品は『ビーストン傑作集』に収録済。 背景 二人の英国作家を比べると、読者にはビーストンの方が好まれていたようだが、訳者はオーモニアを絶賛していた。今読むとオーモニア作品の方が質が高く、幅も広いことがわかる。 |
邦題 | 『アガサ・レーズンと七人の嫌な女』 |
原作者 | M・C・ビートン |
原題 | Agatha Raisin and the Day the Floods Came(2002) |
訳者 | 羽田詩津子 |
出版社 | 原書房 |
出版年 | 2019/6/20 |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『アガサ・レーズンとイケメン牧師』 |
原作者 | M・C・ビートン |
原題 | Agatha Raisin and the Case of the Curious Curate(2003) |
訳者 | 羽田詩津子 |
出版社 | 原書房 |
出版年 | 2019/12/20 |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『メイフェアの不運な屋敷に幕は下り』 |
原作者 | M・C・ビートン |
原題 | Rainbird's Revenge() |
訳者 | 羽田詩津子 |
出版社 | 原書房 |
出版年 | 2019/10/ |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『探偵アローウッド 路地裏の依頼人』 |
原作者 | ミック・フィンレー |
原題 | Arrowood(2017) |
訳者 | 矢沢聖子 |
出版社 | ミック・フィンレー |
出版年 | 2019/1/20 |
面白度 | ★★★★ |
主人公 私立探偵ウィリアム・アローウッド。本編の語り手は助手のノーマン・バーネット。マフィン売りの少年ネディがベイカー・ストリート遊撃隊のような活躍をする。 事件 舞台は1895年のロンドン。ある日美しいフランス人女性が、失踪した兄を探して欲しいと助けを求めてきた。兄は<牛樽亭>の従業員であったが、その経営者は問題のクリーム。アローウッドらは過去にクリームから手痛い暴力を受けていたが、秘かに従業員に接触を図り……。 背景 ホームズ物のパロディーではなくホームズのライバルが活躍する物語と言った方が相応しい。ホームズに媚びない態度がなにより好感が持てる。謎解き小説の要素は少なく、アイルランド独立などを巡るスリラーとしての方が楽しめよう。続編が期待できそうな作品だ。 |
邦題 | 『魔女の不在証明』 |
原作者 | エリザベス・フェラーズ |
原題 | Alibi for a Witch(1952) |
訳者 | 友田葉子 |
出版社 | 論創社 |
出版年 | 2019/8/30 |
面白度 | ★★★ |
主人公 バラード家(イタリア、サンアンティオーコ在住)の一人息子ニッキーの家庭教師として雇われたルース・シーブライト。独身のイギリス女性。 事件 ルースは4年も滞在しており、そろそろ帰国を考えていた。だがニッキーとその父親は諍いを繰り返していて不安でもあった。そして知人訪問後に帰宅してみると、父親の死体とニッキーの逃亡を目撃。だがそこに警官が登場し、山中で父親の死体が見つかったというのだ! 背景 多作家(71冊もの長編あり)の著者の13作目の作品(本書は12冊目の邦訳)。父親の死体が二体という不可能興味溢れる発端が魅力的で、その後の展開もサスペンスに富んでいるが、終盤はさすがに謎の回収に無理が目立ってくる。ルースの魅力がイマイチなのも残念。 |
邦題 | 『ニュー・イン三十一番の謎』 |
原作者 | オースティン・フリーマン |
原題 | The Mystery of 31 New Inn(1912) |
訳者 | 福森典子 |
出版社 | 論創社 |
出版年 | 2019/1/30 |
面白度 | ★★★ |
主人公 ホームズのライヴァルの一人ジョン・イヴリン・ソーンダイク。法医学者で法廷弁護士でもある。物語の語り手は、ジュニア・パートナーとなる代診医のジャーヴィス。 事件 ニュー・インで死体が見つかった。死者は東洋学者ブラックで、奇妙な点は最近遺言書が書き換えられ、遺産受け取り予定者が遺産を失ったことだった。一方ジャービスは謎の男から患者の診察を依頼されたが、その患者はアヘン中毒者であることがわかり……。 背景 『赤い拇指紋』『オシリスの眼』に続く著者の3作目。時代は、まだ箱馬車が交通手段として活躍している頃で、正体不明の患者と遺産相続を巡る謎を扱ってる。二つの謎の関係性や犯人の意外性には驚きは少ないが、ソーンダイクが考えた百年前のGPS機能が興味深い。 |
邦題 | 『バービカンの秘密』 |
原作者 | J・S・フレッチャー |
原題 | The Secret of the Barbican(1924) |
訳者 | 中川美帆子 |
出版社 | 論創社 |
出版年 | 2019/11/15 |
面白度 | ★★★ |
主人公 15本の短編からなる短編集。短編の主役は毎回異なる。 事件 「時を競う旅」「伯爵と看守と女相続人」「十五世紀の司教杖」(杖の中から宝石を見つけて……という話だが、結末が爽やか)「黄色い犬」「五三号室の盗難事件」「物見櫓の秘密」「影法師」「荒野の謎」「セント・モーキル島」「法廷外調査」「二個目のカプセル」「おじと二人のおい」「特許番号三十三」「セルチェスターの祈祷書」「市長室の殺人」の15本。 背景 長編だけでも百冊以上ある多作家のノンシリーズのバラエティに富んだ短編集。当時の人気作家らしく、どの短編もそこそこ読ませるものだが、逆に言えば傑作は無い。プロットの面白さで勝負する作家だけに、長編より短編の方が中だるみ感がなく読み切れる。 |
邦題 | 『楽園事件: 森下雨村翻訳セレクション』 |
原作者 | J・S・フレッチャー |
原題 | The Diamonnds(1904)、Wrychester Paradise(1921) |
訳者 | 森下雨村 |
出版社 | 論創社 |
出版年 | 2019/3/30 |
面白度 | ★★ |
主人公 本書は長編(ただし抄訳)「ダイヤモンド」と「楽園事件」から構成された単行本。どちらの作品もプロットの面白さで読ませるもので、明らかな主人公はいない。しいて挙げれば前者ではダイヤの首飾り、後者では謎解きを手掛ける医師ブライスか。 事件 「ダイヤモンド」は、ダイヤの首飾りを手に入れた人間は次々と死んでいくものの、偶然手放した女性には幸運が訪れるという「因果は巡る」話。「楽園事件」はライチェスタの大伽藍から墜落した謎の人間を巡るミステリで、その解決には過去の事件が絡む。 背景 二本とも訳者が戦前の博文館時代に雑誌掲載のために訳したもの。特に前者は青少年を対象としており、読みやすさだけが取り柄か。湯浅篤志氏の努力で刊行された。 |
邦題 | 『密室殺人』 |
原作者 | ルーパート・ペニー |
原題 | Sealed Room Murder(1941) |
訳者 | 熊井ひろ美 |
出版社 | 論創社 |
出版年 | 2019/6/30 |
面白度 | ★★★ |
主人公 本編の語り手はおじの経営する探偵事務所の所員若きダグラス・マートンだが、事件の謎解きをするのはスコットランド・ヤードの主任警部エドワード・ビール。 事件 事務所にミセス・スティールという名の未亡人が調査の依頼に来た。一時はおじの恋人であったからだが、今では一族の姉妹らとともに<樅の木荘>に住んでいるが、最近いやがらせが頻発していて犯人を突き止めてほしいという。だがその3日後密室で殺されてしまったのだ! 背景 1936〜1941年の5年間のみ活躍した(別名義の作品を入れて8冊を上梓した)謎の多い著者の邦訳第4弾。既訳すべてに登場したビール主任警部が終盤に密室殺人の謎を解く。謎解きが図解入りなので、最終的には小説というよりパズルという印象を与えてしまうのが残念だ。 |
邦題 | 『十一番目の災い』 |
原作者 | ノーマン・ベロウ |
原題 | The Eleventh Plague(1953) |
訳者 | 福森典子 |
出版社 | 論創社 |
出版年 | 2019/5/30 |
面白度 | ★★★ |
主人公 複数の人物が事件解決に関与しているが、一人に絞るならオーストラリア警察犯罪捜査局(CIB)の若き刑事ウィリアム(ビル)・ウェッソンか。 事件 豪州シドニーの海中から男の死体が見つかる。だが身元を知る手掛かりはまったく残されていなかった。ビルは、唯一の証拠品である死体の顔写真から男を探しまわるが、ナイトクラブ<グリーン・クカブラ>を訪ねたことから、マリファナの密輸事件にも関わっていく。 背景 カーばりの不可能犯罪物を得意とすると思われた著者の邦訳第三弾。後半にはその片鱗を少し示すものの、意外にも不可能犯罪の謎解きはつまらない。つまりプロットや登場人物の会話の面白さで読ませる風俗ミステリというべきだろう。 |
邦題 | 『フラックスマン・ロウの心霊探究』 |
原作者 | E&H・ヘロン |
原題 | Ghosts(1899) |
訳者 | 三浦玲子 |
出版社 | 書苑新社 |
出版年 | 2019/7/8 |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『巡査さんと村おこしの行方』 |
原作者 | リース・ボウエン |
原題 | Evan Help Us(1998) |
訳者 | 田辺千幸 |
出版社 | 原書房 |
出版年 | 2019/3/20 |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『貧乏お嬢さま、イタリアへ』 |
原作者 | リース・ボウエン |
原題 | On Her Majesty’S Frightfully Secret Service (2017) |
訳者 | 田辺千幸 |
出版社 | 原書房 |
出版年 | 2019/7/20 |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『巡査さん、合唱コンテストに出る』 |
原作者 | リース・ボウエン |
原題 | Evanly Choirs() |
訳者 | 田辺千幸 |
出版社 | 原書房 |
出版年 | 2019/9/20 |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『メインテーマは殺人』 |
原作者 | アンソニー・ホロヴィッツ |
原題 | The word is Murder(2017) |
訳者 | 山田蘭 |
出版社 | 東京創元社 |
出版年 | 2019/9/27 |
面白度 | ★★★★ |
主人公 謎解き担当は元刑事で、ロンドン警視庁の顧問ダニエル・ホーソーン。語り手は『カササギ殺人事件』などを執筆している実在のアンソニー・ホロヴィッツ。 事件 資産家の老婦人は、自らの葬儀の手配をしたその日に絞殺された。彼女は自分の死を知っていたのか? 奇妙な事件であったが、昔仕事で知り合ったホーソーンから、この事件は自分が捜査するから、共同で行動しその経緯を本にしないかと提案されたのだった。 背景 『カササギ殺人事件』に次ぐ新作。ワトソン役が作者なので叙述トリックを用いたミステリかと思ったら、クリスティ流の小ネタを利用したフェアな謎解き小説であったのには感心。またクリスティの孫を登場させるなどの”遊び”もあって大いに楽しめる。 |
邦題 | 『サイコセラピスト』 |
原作者 | アレックス・マイクリーディーズ |
原題 | The Silent Patient(2019) |
訳者 | 坂本あおい |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 2019/9/15 |
面白度 | ★★★★ |
主人公 謎解きの探偵役はいない。物語の語り手は心理療法士のセオ・フェイバー。42歳。彼が担当を志願した患者は画家のアリシア・ベレンソン。 事件 セオは抑圧的な父親に苦しめられながらも、同じ境遇の人間を助けようと心理療法士となった。そして彼が注目したのが、6年前に写真家の夫を射殺し、その後まったく言葉を発しなくなったアリシアだ。幸運にもセオは、彼女が収容された施設の職員に採用されるが……。 背景 著者の第一作だが、アメリカでは長らくベストセラー・リスト入りをしていた注目作。最後の20頁手前までは、サイコ・スリラーとしてはそれほど意外性のある展開ではないものの、そこからの逆転劇が興味深い。後味も爽やか。 |
邦題 | 『名探偵の密室』 |
原作者 | クリス・マクジョージ |
原題 | Guess Who(2018) |
訳者 | 不二淑子 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 2019/8/15 |
面白度 | ★★★ |
主人公 テレビ・タレントのモーガン・シェパード(36歳)。11歳で担任教師殺しを解決したことで評判になり、芸能界入り。現在はTV番組「スタジオ探偵」で探偵役を務めている。 事件 ある日、モーガンは目覚めると何故かホテルのベッドに手錠で繋がれていた。周囲には見知らぬ男女5人がおり、バスルームで謎の他殺死体も見つかる。そして突然TVに男が映り、3時間以内に殺人犯を見つけ出さないとホテルごと爆破すると告げたのだ! 背景 新人の第一作。ロンドン大学の修士論文として執筆した小説というから驚きだ。プロットは日本の新本格ミステリのような奇抜な設定。しかもスピード感のある語り口で事件を描写しているので前半は興味深いが、後半は常識的な解決で、本格物というよりサスペンス小説か? |
邦題 | 『アイル・ビー・ゴーン』 |
原作者 | エイドリアン・マッキンティ |
原題 | In the Morning I'll be Gone(2014) |
訳者 | 武藤陽生 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 2019/3/25 |
面白度 | ★★★★ |
主人公 お馴染みのシリーズ・キャラクター、王立アルスター警察隊巡査部長ショーン・ダフィ。本書ではMI5のおかげで犯罪捜査課の警部補に戻ることになった。 事件 復職を条件にしたMI5の依頼は、IRAの大物テロリストにしてダフィの旧友ダーモットを探すこと。彼は脱獄して行方不明であったからだが、彼の元妻の母は、娘の死の謎を解けば、彼の居場所を教えるという。だがその娘は密室で死んでおり、自殺と処理された事件だった。 背景 ショーン・シリーズの第3弾。本書の特徴は、島田荘司の『占星術殺人事件』に触発されて、警察冒険小説に密室の謎を絡ませていること。前2作には元々ミステリらしい仕掛けがあったから、本格味を加えても違和感はない。語り口は相変わらず巧みなうえに迫力も十分だ。 |
邦題 | 『カルカッタの殺人』 |
原作者 | アビール・ムカジー |
原題 | A Rising Man(2016) |
訳者 | 田村義進 |
出版社 | 早川書房 |
出版年 | 2019/7/15 |
面白度 | ★★★★ |
主人公 イギリス人でインド帝国警察の警部サミュエル(サム)・ウィンダムと部下としてサムを助けるインド人の部長刑事サレンダーノット(サレンドラナート)・バネルジー。 事件 舞台は英国統治下の1919年のカルカッタ。ウィンダムはヤードの敏腕警部だったが、大戦を経て妻を失い、失意の中でインド帝国警察に赴任した。一方のバネルジーは若く優秀な新米刑事。二人は英国人政府高官がインド人街で惨殺された事件を捜査することになったが……。 背景 第一作の本書でCAWの歴史ミステリ賞を受賞。著者はインド系の移民二世だそうだが、事件の舞台ばかりではなく、サムとサレンダーノットの人物造形・性格設定が巧みだ。当時の体制下でも理想に燃えるサレンダーノットや悩むサムにはやはり共感を覚えるだろう。 |
邦題 | 『死者の饗宴』 |
原作者 | ジョン・メトカーフ |
原題 | The Feasting Dead() |
訳者 | 横山茂雄・北川依子 |
出版社 | 国書刊行会 |
出版年 | 2019/5/ |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『血泥の戦場』上下 |
原作者 | クリス・ライアン |
原題 | Bad Soldier() |
訳者 | 石田享 |
出版社 | 竹書房 |
出版年 | 2019/3/ |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |
邦題 | 『秘中の秘』 |
原作者 | ウィリアム・ル・キュー |
原題 | The Tickencote Tresure(1903) |
訳者 | 平山雄一 |
出版社 | ヒラヤマ探偵文庫 |
出版年 | 2019/11/ |
面白度 | ★★ |
主人公 語り手のポール・ピッカリング。事件当時は代診医で、32歳の独身。宝探しの協力者は船長のジョブ・シールと銀行員だったフィリップ・ライリー。 事件 病院勤務医をしていた私(ピッカリング)は、シール船長と知り合い、貨物船の船医となった。そして地中海から母国への帰途、古い幽霊船に遭遇。船長らと乗り込んでみると、羊皮紙や金貨が見つかったばかりか、謎の老人までいたのだ! 羊皮紙に書かれた内容は? 背景 菊池幽芳の翻案が新聞に連載され、母から読み聞かせられた江戸川乱歩がミステリーに開眼したという作品。本書は完訳版。暗号の謎もあるが、悪漢らとの宝探しの先陣争いの方が面白い。当時の宝探し小説の王道を行くプロットだが、今では中学生向け程度のものか。 |
邦題 | 『クラヴァートンの謎』 |
原作者 | ジョン・ロード |
原題 | The Claverton Mystery(1933) |
訳者 | 渕上痩平 |
出版社 | 論創社 |
出版年 | 2019/2/28 |
面白度 | ★★★ |
主人公 シリーズ探偵で数学者のランスロット・プリーストリー博士。 事件 博士が旧友クラヴァートンの屋敷を久々に訪れると、彼の様子がおかしい。主治医から話を聞くと、クラヴァートンは6週間前に砒素を飲まされたらしいと言う。そして翌週、容態が急変して亡くなったが、検死では毒薬が一つも見つからなかったのだ! 背景 ロード単独書(共著やリレー長編は除く)の邦訳書としては7冊目。“退屈派”巨匠の一人だが、本書に限ってはその批評は当てはまらない。特に死因が毒薬ではないと結論付けられる前半は、並みのサスペンス小説以上の迫力。だが遺書の内容があまりに作り物過ぎるし、ハウダニットの謎も科学者が淡々と説明するだけで、読者はワクワク感を抱けない。 |
邦題 | 『殺されたのは誰だ』 |
原作者 | E・C・R・ロラック |
原題 | Murder by Matchlight(1945) |
訳者 | 松本 真一 |
出版社 | 風詠社 |
出版年 | 2019/4/19 |
面白度 | |
主人公 事件 背景 |